日本本社との立替金決済・相殺は認められる?
日本本社との立替金は、例えば駐在員の給与を本社で立て替えて日本で払ってもらったり、逆に日本からの出張者の費用を現地法人で立て替えたりと双方において発生します。
また、お互いにモノやサービスの売り買いをする場合には、双方に相手に対する買掛金、売掛金が生じることとなります。
このような場合に、立替金の日中間での決済や、買掛金、売掛金の相殺は可能なのでしょうか?
日中間の立替金決済
中国の外貨管理政策は1980年の外貨兌換券との交換から始まって制度上は徐々に自由化が進められており、その管理方針も事前申請、審査から事後管理へと転換しています。
2008年には国外との貿易取引やサービス取引などの経常項目について決済が原則自由化され、2010年には関連企業間での10万USD以下の立替・分担経費決済は銀行審査により送金が認められるようになりましたが(匯発[2010]43号)、実務的には立替金の送金が認められない状況が多く見られました。
更に2013年9月1日からは5万USD以下のサービス取引決済について原則銀行審査不要、5万USD超の対外送金についても、一部税務届出手続きを不要とする規定(匯発[2013]第30号、国家税務総局・国家外貨管理局公告[2013]第40号)が施行されました。
現在はこの規定に従って運用されており、関連企業間の立替金を含むその他の立替金についても5万USD以下の受取り、支払いは銀行審査が不要で、5万USDを超える場合でも駐在員の立替給与の送金は原則税務届出が必要ですが、国外出張時の経費や会議費等を含むそれ以外の立替金の決済は税務届出が不要だと解されます。
(各項目ごとの対外送金手続きと課税関係についてはこちら)
ただし、駐在員の立替給与の送金の際は、出向者PEと認定されると税務届出時点で企業所得税が課税されてしまいますので注意が必要です。
(中国のPE課税についてはこちら)
関連会社への立替金の送金については、立替期間は12ヶ月を超えないこととされています。
以前あるケースでは駐在員の立替給与についてPEの有無を税務局と争っているうちに本社からの立替費用請求書日付から1年が経過してしまい、PE課税の問題が解決しても1年以上前の請求分については送金が認められなかったというケースがありました。
なお、上記の税務届出はあくまで対外送金の際に必要となるものですので、中国の会社で立て替えた立替金を国外から受け取る場合には税務届出は不要です。
債権債務の相殺
では、中国外の企業に対して買掛金と売掛金の両方が計上される場合に、相殺した上で差額を決済することは可能でしょうか。
この点サービスの輸入と輸出による債権債務であれば通関業務が発生せず、5万USD以下であれば上述の通り銀行審査も原則不要のため、契約書次第で相殺した上での決済も実務上可能です。
ただし、中国の外貨管理制度においては、外貨の受け取りと支払いは別々に管理されており、制度上は国外企業との相殺による決済の方法も用意されていないため、やはり債権債務は別々に決済するのが妥当であると言えます。
参考規定:「『国家外貨管理局行政許可項目リスト』公布についての通知」(匯発[2010]43号)、「サービス貿易外貨管理法規の印刷・配布についての通達」(匯発[2013]第30号)、「サービス貿易等項目の対外支払にかかる税務届出に関する問題の公告」(国家税務総局・国家外貨管理局公告[2013]第40号)
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