中国 省・市を跨ぐ税務登記移転手続きの簡素化!

 

これまで中国の企業が省や市を跨いで会社登記を移転することは手続きが煩雑で、転出地の地方当局からの承諾が得られないこともあり、ハードルが高いものでした。
 
「複数の税収徴収管理サービス事項を最適化するための通知」(税総徴科発[2022]87号)(原文はこちら)が2023年4月1日より施行されることに伴い、省や市を跨ぐ移転について簡素化された税務手続きが定められました。
 
同通知の税務登記移転に係る手続きの概要は以下の通りです。
 
2.省を跨ぐ移転税務サービスプロセスの最適化
(1)転出プロセスの最適化。
納税者が他の省に移転する場合、市場監督管理部門に住所変更登記を行った後、転出地の主管税務機関に「省(市)間の移転に関する税務事項報告表」を記入・報告する。税務調査状況がなく、発票と税金統制設備を返還し、税金・延滞金・罰金及びその他の未処理税務関連事項が存在しない納税者に対して、税務機関は『省(市)間の移転税収徴収管理情報確認表』を発行し、納税者に転入先において継続的に享受する関連資格及び権益などの情報を通知し、規定された期限内に納税申告義務を履行することを通知する。納税者が確認した後、税務機関は即時に転出手続を行い、関連情報を転入先の税務機関に通知する。
 
(2)転入プロセスの最適化。
転入先の主管税務機関は納税者情報を受け取った後、1営業日以内に主管税務課の割当て、税(費)目の認定を完了し、転入先に手規定された期限内に納税申告を行うことを喚起する。
 
(3)関連事項を明確にする。
納税者の以下情報を転入先に引き継ぐ:納税者の基礎情報、財務会計制度の届出、税務担当者実名の収集、増値税一般納税人登記、増値税発票種類の査定、増値税専用発票発行限度額、増値税の即時徴収即時還付資格、輸出還付(免除)の届出、すでに発生した納税信用評価等の情報。
 
納税者が移転する前に源泉納付された税金は、転入先で引き続き規定に基づいて控除できる。企業所得税、個人所得税が補填されていない累損がある場合は、転入先で引き続き規定に基づいて補填することができる。控除されていない仕入増値税額は、転入先で引き続き規定に基づいて控除することができ、「増値税一般納税人仕入税額移転書」の発行申請をする必要はない。
 
 
これまで企業の清算手続きについては簡素化が進められてきました。
(簡易抹消登記制度についてはこちら、税務登記抹消手続き簡素化についてはこちら
 
移転手続きも転出地の税務登記抹消が必要になる点で、税務上は清算に近い手続きが必要となりますが、上記の清算手続きの簡素化措置はあくまで清算手続きに対するもので、移転手続きには適用できなかったため、昨今は税務移転手続きが清算よりもむしろ煩雑になる、という問題が生じていました。
具体的には地域によっては管轄税務局の帳簿検査が半ば必須のプロセスとされていたり、発展改革委員会等の審査機関の承認が必要で、かつその審査が長期化して中々承認されない、といった問題です。
 
上記の通達ではこのような税務移転手続きを簡素化したもので、特に煩雑であった転出地での手続きについて税務上の未完了事項がない場合は原則即時処理することを定めています。
これにより、清算時の税務登記抹消手続きと同様に、原則として徴収管理システムでの未完了事項の検出とそのフォローアップで完結するプロセスとなり、税務移転手続きの中で税務局が介入する余地が大幅に軽減されることが期待できます。
一方で、税源の流出を食い止めたい地方当局にとっては、特に納税額の大きな企業であれば同通知の運用に実務上制限をかけたり、書類を中々受理しないなどの方法でスケジュールを大幅に遅延させたり、といった対応も想定されます。
 
通常こうした簡素化措置が実務上運用され始めるまでに数カ月~場合によっては1年以上のタイムラグがあり、またその運用の方法にも地域差が生じるのが通例ですので、実際に移転を実行される際には管轄地域での運用について事前に確認されることを推奨いたします。
 
 

 

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