分公司って?10分でわかる中国子会社の分公司の仕組み

 

中国では、日本の「支店」に相当する機構として分公司というものがあります。
 
外資系企業が中国に進出して営業活動を行うには現地に法人を設立する必要がありますが、事業展開の状況に応じて別の地域での営業拠点や顧客へのアフターサービスを提供する拠点が必要になったりします。
その際に既存の中国法人と同種の事業を展開する場合には、新たな法人を新設するのではなく、既存法人の下部機構として該当地域に支店(分公司)を設立するという選択肢を取ることが一般的です。
 
さらに、この分公司は業務形態の違いから、一般的に「経営性分公司」と「非経営性分公司」と呼ばれる2種類に分類されます。
 
以下では中国の分公司の特徴や設立手続きについて簡単にご紹介します。
 
 

分公司の特徴

上述した通り分公司は「経営性分公司」と「非経営性分公司」の2形態に分類できますが、これらと法人を比較した特徴をまとめると以下のようになります。
 
分公司の特徴まとめ
 
まず、「経営性分公司」と「非経営性分公司」の大きな違いは分公司の機能として営業活動を含めるかどうかに集約されます。
 
「経営性分公司」の場合、自らが契約の主体となって営業活動を行い、それに伴って売上の計上や発票の発行、増値税の申告・納付などの業務が生じますので、企業にとっては営業活動の地域的な拡大が見込める反面、管理業務のコストが増加します。
 
これに対し、「非経営性分公司」は収益の計上を伴う営業活動を行わず、発生した経費は本店(総公司)でまとめて記帳を行うこととなりますので、管理業務がそれほど複雑化しないというメリットがあります。
ただし、地方政府にとっては主に個人所得税しか税収が見込めないことから、「経営性分公司」に比べて地方政府のサポートは得にくく、むしろ地方によっては設立が認められない、或いは敬遠される傾向があったり、「非経営性分公司」として登記しても管轄税務局が企業所得税のゼロ申告を認めないこともあります。
そのため、当初「非経営性分公司」として登記したものの、地方政府からの圧力などを受けて「経営性分公司」に変更せざるを得ないケースも見受けられます。
 
続いて、これら分公司と法人の違いですが、主に法人であれば分公司に比べてより独立した事業運営や意思決定の仕組みを構築できる一方で、本社から資本金の払い込みが必要となり、既存法人の下部機構ではない独立した新規法人が1社増えることになりますので、グループ全体で見れば管理コストが増加することになります。
 
一方で分公司の場合は法的には既存法人の一部として分公司の負う債務は最終的に既存法人(総公司)が負うとともに、仮に分公司単体で損失が出た場合も既存法人(総公司)の決算において税務上損益の通算ができるという特徴があります。
以前は分公司の経営範囲は総公司の経営範囲に限定され、分公司単位での税関登記が認められませんでしたが、2019年からこうした制限がなくなり、総公司と異なる業務や分公司名義での貿易取引もできるようになりましたので、より法人に近い形態での役割が担えるようになりました。その意味においても、「経営性分公司」は日本における支店の位置づけにかなり近いと言えると思います。
 
 

分公司の設立手続き

一般的な分公司の設立手続きフローは以下の通りです。
 
  1. 市場監督管理局で分公司名称&諸情報登録(地域によっては不要)
  2. 市場監督管理局で登記
  3. 分公司営業許可証の発行
  4. 関係各局への登録と銀行口座開設

 

 

分公司の納税方式

「経営性分公司」と「非経営性分公司」の違いは必ずしも納税方式の違いと合致しませんが、原則として「経営性分公司」は個人所得税に加え、その所在地で企業所得税や増値税の納付をする必要があります。
「非経営性分公司」の場合でも、上述の通り管轄税務局が分公司の経営範囲や業務内容を元に企業所得税のゼロ申告を認めないこともあるため、その場合は分公司の所在地で企業所得税や増値税を納付せざるを得ないこともあります。
 
増値税はその分公司名義で発行した発票の収入額に基づいて申告することになるので比較的シンプルで、卸売の業態であれば総公司が契約主体になることにより分公司でほとんど課税売上が発生しないケースも多いと思いますが、分公司が顧客と契約を締結し発票を発行すれば分公司所在地で納税が必要です。
一方企業所得税は総公司と経営性分公司の課税所得額を合算し、計算した納付税額の内50%を総公司所在地で納付、残りの50%を一定の計算方法に基づいて他の各経営性分公司に割り振ることになります。
納付の方法は毎月あるいは四半期毎に前年実績に基づいて予定納付し、年度末に差額の精算を行います。
 
日系企業でよく見られるケースでは、販売会社が上海などの大都市にあり、その傘下に各地方の分公司が設置されているようなパターンです。こうしたケースでは、そのすべてが「経営性分公司」として現地に企業所得税を配分しているパターンもあれば、その一部のみが「経営性分公司」で、それ以外は「非経営性分公司」として個人所得税のみ納税しているパターンもあり、まちまちです。
 
 
 
 

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