相続した国外財産の評価方法とは?

 

 

遺産を相続する際に、日本国内の財産だけでなく、国外の財産が含まれる場合があります。
その場合は相続税を算定するにあたり、どのように財産を評価するのでしょうか?

まず日本の相続税や贈与税を計算する際の評価基準を定めた財産評価基本通達の5-2では、国外財産の相続であっても国内財産と同様に評価する旨が規定されています。

ただし、現実的には日本で路線価方式や倍率方式で土地を評価したり、固定資産税評価額で建物を評価するのと同じ方法で国外財産を評価するのは難しいため、日本と同様の方法で評価するのが難しい場合はそれに準じる方法や売買実例価額、精通者意見等のその他の方法を用いることが同通達や国税庁質疑応答事例において明らかにされています。

それでは、各財産の項目ごとにどのように評価するのかを以下で見ていきましょう。

 

不動産

まず不動産です。

国外にある土地や建物は上述した通り、国内財産と同様の方法で評価することが事実上難しいため、一般的に現地の専門家による鑑定評価書を入手することとなります。

ただし、売買実例がほとんどないような土地であったり専門家による鑑定が入手できないようなケースでは、その他の合理的な方法、例えば取得価額から合理的な価格変動を反映して算出するといった方法により時価を算定することとなります。

 

有価証券

続いて有価証券です。
有価証券も不動産と同様に原則として財産評価基本通達に基づいて評価することとなります。

外国の証券取引所で上場している株式は相続時点の株価を取得することができますので、同通達に則り、相続時の証券取引所の公表する最終価格と相続時以前3ヶ月の最終価格の月平均額のうち最も低い価額によって評価することとされています。

投資信託などの株式以外の金融商品の場合も、取引所の時価によって評価します。

非上場の株式を相続する場合には、原則として評価対象会社の純資産に基づいて算定する純資産価額方式によることになりますが、同族株主以外の少数株主であれば特例的に年配当金額を一定の利率で還元して算定する方法によることもできます。
ただしこれらの算定の基となる基数はあくまで日本の非上場株式を前提に定められていますので、外国の株式はその国の実態に合わせて算定する必要があります。
そのため、日本の通達に基づいた算定が難しい場合には、不動産と同様現地の専門家による株価評価書を入手する方法もあります。

 

預金

海外にある銀行預金の場合は、取引機関が公表する被相続人の死亡した日の最終のTTB(対顧客直物電信買相場)による換算額で評価します。
該当日が休日などで為替相場が入手できない時は、最も近い日のTTBによって換算します。

 

生命保険

外国の生命保険はかつて相続時に相続税ではなく、一時所得扱いで所得税・住民税の対象となっていたので、節税の方法として利用されていましたが、2007年の税制改正において相続財産として扱われるようになりました。

そのため、被相続人の死亡時に外国の保険会社から受け取る保険金は預金と同様にTTBによって円換算し、日本で受け取る保険金と同じように「500万円×法定相続人の数」の相続税の非課税枠を使うことができます。