アルトコインの取得価額の計算 ビットコイン(仮想通貨)の確定申告シリーズ③(応用編)

日本の取引所に上場していないアルトコインを海外の取引所でビットコインやその他の通貨建てで購入するような場合は売買損益の計算は非常に複雑になります。

アルトコインは通常法定通貨では購入できないので、まずビットコインやイーサリアムなどの基軸通貨建てで売買することとなり、取引損益を確定するためには売買時点での時価を円貨で取得する必要があります。
海外の取引所であればそもそも過去のレートを開示してなかったりUSD建てでしか取得できなかったりしますので、確定申告にあたってはきちんと計算のルールを決めてそのルール通りに計算をしていることを後から説明できるようにしておく必要があります。

それでは、具体的な計算例を元にやってみましょう。
ここでは、12月に高騰し、1年で1900倍になったと話題になったVergeというアルトコインをBinanceという取引所で売買したケースを考えます。
以下ではビットコインをBTC、VergeをXVGと表記しており、取引に係る取得手数料は取得価額に含めて処理しています。

 

ビットコイン購入&送金取引

まずはじめは、4月1日にCoincheckで買った5BTCを5月1日にBinanceに送金したとします。

損益

取引所間の送金で原則損益は発生しない!
(送金手数料は損失として処理)

ビットコインでVerge(XVG)購入取引

続いて11月1日にBinanceで2.64BTC分のXVGを3百万枚購入しました。

損益

仮想通貨同士の交換なので一旦利確したと考える!

原則計算パターン①:Binanceのレートを使うパターン

Binanceは海外取引所なので法定通貨はアメリカドル建てのレートしかありません。
Binanceのレートを使う場合は、一旦USDで利確したと考え、当日のUSD/JPYレートから円貨建ての決済額を計算することになります。

XVG購入時点でのBTC/USDレート=6,400
XVG購入日のUSD/JPYレート=113.86
よって、2.64BTC×6,400USD×113.86円(決済額)ー2.64BTC×10万円(取得価額)=1,659,779円(利益)
 
簡易計算パターン②:国内取引所レートを使うパターン

海外取引所によっては売買時の時価を取得するのが困難である場合も多いため、簡便的に国内取引所での円貨レートを用いることも可能だと思います。

XVG購入時点でのBTC/JPYレート=71万円
よって、2.64BTC×71万円ー2.64BTC×10万円=1,610,400円(利益)
 

ビットコインでVerge(XVG)売却取引

保有するXVG3百万枚の内、値上がりしたので2百万枚をBTCに交換しました。

取得価額

原則パターン①:2.64BTC×6,400USD×113.86円/(3,000,000ー3,000)×2,000,000XVG=1,283,802円(小数点未満切り捨て)

簡便パターン②:2.64BTC×71万円/(3,000,000-3,000)×2,000,000XVG=1,250,850円(小数点未満切り捨て)

損益

原則パターン①

取引時Binanceレート BTC/USD=16,500
取引時為替レート USD/JPY=112.99
よって、15BTC×16,500USD×112.99円ー1,283,802円=26,681,223円(利益)
 

簡便パターン②

取引時国内取引所レート BTC/JPY=200万円
よって、15BTC×200万円ー1,250,850円=28,749,150円(利益)
 

ビットコインでVerge(XVG)購入取引

最後は、12月30日に更に50万枚のXVGを買い増しました。

取得価額

この時点でのBTC保有残高:5BTCー2.64BTC+15BTCー0.015BTC=17.345BTC

原則パターン①:{(5ー2.64)BTC×10万円+15BTC×16,500USD×112.99円}/17.345×5.5BTC=8,942,383円(小数点未満切り捨て)

簡便パターン②:{(5ー2.64)BTC×10万円+15BTC×200万円}/17.345×5.5BTC=9,587,662円(小数点未満切り捨て)

損益

原則パターン①

取引時Binanceレート BTC/USD=13,000
取引時為替レート USD/JPY=113.05

よって、5.5BTC×13,000USD×113.03円ー8,942,383円=860,738円(損失)

簡便パターン②

取引時国内取引所レート BTC/JPY=164万円

よって、5.5BTC×164万円ー9,587,662円=567,662円(損失)

 

総平均法

総平均法で計算すると以下のようになります。

原則パターン①

BTC総取得金額:5BTC×10万円+15BTC×16,500USD×112.99円=28,465,025円

BTC総取得数:5BTC+15BTCー0.015BTC=19.985BTC

BTC売却数:2.64BTC+5.5BTC=8.14BTC

BTC売却金額:2.64BTC×6,400USD×113.86円+5.5BTC×13,000USD×113.03円=10,005,423円(小数点未満切り捨て)

BTC取得価額:28,465,025円/19.985BTC×8.14BTC=11,593,960円(小数点以下切り捨て)

BTC売買損益:10,005,423円ー11,593,960円=1,588,537円(損失)

XVG総取得金額:2.64BTC×6,400USD×113.86円+5.5BTC×13,000USD×113.03円=10,005,423円(小数点未満切り捨て)←BTC売却金額と同じ

XVG総取得数:3,000,000XVGー3,000XVG+500,000XVGー500XVG=3,496,500XVG

XVG売却数:2,000,000XVG

XVG売却金額:15BTC×16,500USD×112.99円=27,965,025円

XVG取得価額:10,005,423円/3,496,500XVG×2,000,000XVG=5,723,107円(小数点以下切り捨て)

XVG売買損益:27,965,025円ー5,723,107円=22,241,914円(利益)

よってBTCの損失とXVGの利益を合計した期間損益は▲1,588,537円+22,241,914円=20,653,377円(利益)となります。

 

簡便パターン②

BTC総取得金額:5BTC×10万円+15BTC×200万円=30,500,000円

BTC総取得数:5BTC+15BTCー0.015BTC=19.985BTC

BTC売却数:2.64BTC+5.5BTC=8.14BTC

BTC売却金額:2.64BTC×71万円+5.5BTC×164万円=10,894,400円

BTC取得価額:30,500,000円/19.985BTC×8.14BTC=12,422,817円(小数点以下切り捨て)

BTC売買損益:10,894,400円ー12,422,817円=1,528,417円(損失)

XVG総取得金額:2.64BTC×71万円+5.5BTC×164万円=10,894,400円←BTC売却金額と同じ

XVG総取得数:3,000,000XVGー3,000XVG+500,000XVGー500XVG=3,496,500XVG

XVG売却数:2,000,000XVG

XVG売却金額:15BTC×200万円=30,000,000円

XVG取得価額:10,894,400円/3,496,500XVG×2,000,000XVG=6,231,603円(小数点以下切り捨て)

XVG売買損益:30,000,000円ー6,231,603円=23,768,397円(利益)

よってBTCの損失とXVGの利益を合計した期間損益は▲1,528,417円+23,768,297円=22,239,880円(利益)となります。

 

なお、仮想通貨以外の一般的な外貨建ての取引では、通常は日単位での円貨換算に加え、週単位や月単位で同じレートを適用することも認められています。

これを元に仮想通貨売買も日単位で計算されたレート(例えば取引時点のレートではなく、取引日の高値と低値の平均を取った仲値など)を取引時点のレートとして使えるかということについては、税理士によっても異なる見解が考えられますが、私の解釈では難しいと考えています。
というのも仮想通貨レートはたった1日の間でもボラティリティが非常に大きいので、日単位のレートで見ると全く損益を正しく反映しないということが十分起こり得るためです。最低でも30分足〜1時間足でのレートを適用する必要があると思います。

日単位でレートを適用して計算されている方は過少申告(もしくは過大申告)となっている可能性があることに十分注意しましょう。

他に、仮想通貨の取得手数料については上記の例では取得価額に含めて処理しましたが、取得時点の損失とする方法も考えられると思います。
一般的に株式等の場合、購入手数料は取得価額に含めますので、上記ではそれに準じて処理していますが、これについて国税庁から明確な指針が出されているわけではありません。

ただし、いずれの処理でも手数料率から考えて損益への影響は軽微と思われますので、どちらを選択することも可能だと思います。

 

(※本記事は2018年1月20日時点の法令を基に執筆され、それ以降の法令改正の影響を反映しておりません。最新の情報については専門家或いは税理士にお問い合わせください。)