中国企業との取引 課税関係や源泉徴収はどうなる?

 

中国で事業を展開していない会社でも中国企業からのアプローチをきっかけにして中国企業との取引がはじまるといったケースでしばしばご相談をいただくことがあります。
 
中国企業との取引を始めるにあたって、どのようなことに留意しておく必要があるのでしょうか?
 
以下では主に税金や決済などの点に着目してご紹介したいと思います。
 
 

①中国の会社にモノやサービスを輸出するケース

中国の会社にモノやサービスを販売する場合は一般的な輸出取引ですが、特にサービス輸出の場合は中国で所得に対する源泉課税が生じたり、下記②のロイヤリティとの線引きがあいまいであることがあるため、事前に課税関係を把握しておく必要があります。
 
日本の消費税にあたる増値税については一部の例外を除いて中国の取引先により送金時に源泉徴収されます。
日本の消費税は輸出の場合は免税となり、原則としてその仕入れにかかった消費税は控除することができます。
 
中国企業との初めての取引であれば契約書をきちんと締結し、回収条件などに注意を払う必要があります。場合によっては前払いの契約条件としたり、L/Cを用いて決済を行うこととなります。税負担についても契約上明確に合意しておくことが望ましいです。
 
 

②中国の会社に無形資産の使用を許諾し、ロイヤリティを回収するケース

中国から日本へのロイヤリティの回収については関連会社間で行われるものが一般的ですが、全く資本関係のない中国の会社と商標やシステムなどのライセンス契約を結んだり、ノウハウを提供したりするケースもあります。
 
この場合は対価をロイヤリティとして回収しますが、中国ではロイヤリティを国外に送金する際政府機関へ契約内容の登録が必要となりますので、回収段階になって送金が遅延することのないよう事前に取引先に対して確認を依頼しておくことが望ましいです。
 
ロイヤリティにかかる源泉税は10%となりますので、契約金額のうち90%分が送金され、源泉税分は日本の外国税額控除により取り戻すことになります。
増値税も6%が課税されますが、モノやサービスの輸出と同様に取引先が源泉徴収義務者となりますので、ロイヤリティの請求時に6%を上乗せして請求します。
 
 
 

③中国の会社に業務を外注するケース

最後は中国の会社に何らかの業務を発注するケースです。
最近ではクリエイティブな業務を中国に外注したりするケースも増えてきています。
 
この場合は中国の会社からサービスを輸入し、対価を国外に送金する形になります。
中国の会社は契約書がなくても口約束で作業を開始する会社も多く、こちらが発注側であれば大半の場合それでも問題がありませんが、対価を支払った後で不具合があったり問題が生じたりする場合に備えて、やはり事前に契約書をきちんと締結しておく方が安全です。
 
中国ではサービスの輸出は原則増値税が課税、一部の例外的なサービスにおいては免税とされていますが、免税を適用する場合は契約毎に届出手続きが必要で、また後から否認されることもありますので、通常は課税処理となります。
そのため、契約時に増値税をどちらが負担するかを確認しておく必要があります。
 
中国内では請求書や領収書として公的な増値税発票という書面を用いますが、納税人番号が必要ですので、日本の会社に対しては発行されません。
 
 
取引先への支払時の源泉徴収義務ですが、発注する業務が一般的な人的役務の提供によるものであれば取引先が日本国内にPEを有しない限り国内で課税が発生しないので源泉徴収は必要ありません。
ただし、例えばあるソフトウェアの新規開発、制作をまとめて発注するようなケースでは、その報酬は著作権譲渡の対価に該当することになりますので、原則として20.42%(日中租税条約に関する届出書を提出すれば10%)の源泉徴収が必要になります。
 
また、中国の会社でなく中国に住む中国人個人に業務を依頼する場合、国内での役務提供でなければ国内源泉所得には該当しないため、源泉徴収の対象外となります。

 

 

 

 

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