中国企業との個人契約、中国からの報酬の受取り(送金)にかかる税金は?

 

前回のコラムでは、日本企業が中国企業との取引をはじめる際の課税関係の留意点について解説しました。
 
一方、数年に亘るコロナ禍で中国企業が日本に自社拠点を設けることができないなどの理由から、日本に居住する個人に何らかの業務を発注するというケースも増加しています。
 
以下では個人が中国企業と業務委託契約を締結する場合、特に問題になりやすい報酬の受取り(中国からの送金)の際の課税関係について紹介したいと思います。
日本に居住する個人が中国企業に対してサービスを提供する場合、主に増値税と呼ばれる流通税と個人所得税が関係することになります。

①増値税

まず日本の消費税に相当する増値税ですが、中国でサービスの販売を行う企業や個人は増値税が課されることとされており、これは中国外の個人であっても該当します。そのため、取引先の中国企業が源泉徴収する形で報酬から差し引かれます。
 
増値税率は収入額に対して6%となりますので、増値税を内税として契約を締結していない限りは契約上の報酬が100であれば増値税6%を上乗せした106を請求することとなります。
 

②個人所得税

続いて個人所得税ですが、企業の所得に対して適用される税目が企業所得税であるのに対し、個人が得た所得には個人所得税が適用されますので、この点が企業として契約する場合と大きく異なる点です。
 
それでは、中国に居住していない日本人が中国企業から報酬を受け取る場合、中国の個人所得税が課されるのでしょうか?
厳密には中国の国内法において、非居住者が中国内で役務提供しない限りは個人所得税は発生しません。
その場合、完全に国外で生じた役務提供であることを前提に、取引先の中国企業には送金時に免税の届出をしてもらいましょう。
 
一方で、実務上は取引先の管轄税務局が免税での届出を認めない(受理しない)ケースも往々にして見られます。
或いは契約内容に中国出張などが盛り込まれており、役務提供が一部中国国内でおこなわれる場合もあります。
 
こうした場合は少し複雑ですが、日中租税条約の適用により中国での課税が回避できるかを検討します。
仮に医師、弁護士やその他の独立の活動によって役務提供を行う自由職業と見なされれば、中国内にPEがない限りは個人所得税の課税も生じないこととされています。
(PEについてはこちら
 
一方、上記の自由職業に該当しない場合には日中租税条約における「その他の所得」として中国国内源泉所得についてはやはり中国内で課税されることになりますので、改めて提供される役務の内、どの部分が中国国内源泉所得にあたるかの検討が必要になります。
シンプルな人的役務の提供であれば、例えば中国出張時の日数分は中国内源泉所得とするなど、役務の提供地によって判断することとなります。
 
仮に報酬全額に対して課税される場合は、中国の個人所得税は最高税率が45%で金額によっては多額の税負担となり、知らずに契約と業務を遂行したものの、いざ入金額を見ると上述の増値税と合わせて半額近くが源泉徴収で差し引かれているという事態になりかねません。
 
そのため、企業名義でサービスを提供する場合と同様に、個人名義でも契約時に報酬の取り決めと合わせて、税負担についても明確化、約定することが重要になります。

 

 

 

 

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