PE課税って?10分でわかるPE課税の簡単解説

PEって?

「Permanent Establishment 」の略称です。恒久的施設と訳しますが、外国法人が別の国で事業を行うための出先機関のようなイメージです。

通常国家の課税権はその国に居住する人や企業にしか及びませんが、外国人や外国法人であってもその国で事業を営むような場合には課税する必要が生じます。そこで、外国人や外国法人の事業所得への課税ルールを決める上で、外国法人の出先機関(PE)がその国にあるか、というPEの概念が必要となります。
もしPEが存在する場合には、あたかもそれを外国法人とは独立した内国法人であるかのようにみなして、それに帰属するすべての所得を申告しないといけません。

逆に言うと、外国人や外国法人がある国で事業を営んでいると思われるケースであっても、「PEなければ課税なし」という国際的なルールによってPEが存在しなければ課税されることはありませんし、仮にPEがあったとしてもその事業所得がPEに帰属しないと判断できる場合にはその国での課税は発生しません。

 

どんな施設があるとPEとみなされるの?

大きく以下の3つに分類することができます。

支店PE

支店、出張所、事業所、事務所、工場、倉庫業者の倉庫および鉱山・採石場等天然資源を採取する場所などのことを指します。

これらは子会社などの法人格を有しないまでも、それが外国に存在する場合ははっきりとした「施設」と呼ぶことができますので、PEとみなされます。ただし、情報の提供、市場調査など、あくまで準備、補助的な機能に留まる場合はPEになりません。

建設PE

建設、据付け、組立て等の作業、またはその指揮監督の役務の提供を1年を超えて行う場合が該当します。

代理人PE

外国法人を代表して契約を締結する権限を持つ人が国内で反復して権限行使しているような場合は、その人の存在自体がPEとみなされます。例えば、外国法人の営業マンが日本で営業活動を展開し、日本で展開する事業の重要な部分を担っているような場合には、この営業マン自体が代理人PEと認定され、日本でも課税されることとなります。

 

帰属主義と総合主義って?

外国法人が別の国で得た所得において、どの所得を申告対象に含めるかという議論の中で帰属主義と総合主義という二つの考え方があります。

すなわち、帰属主義は別の国にPEがある場合、PEに帰属するすべての所得は別の第三国の所得であってもPEの所在する国で申告納税すべきという考え方で、総合主義はもし別の国にPEがあれば、外国法人はその国で得た国内源泉所得はそのPEに帰属するか否かに限らずすべて申告納税すべきという考え方です。

少しわかりづらいですが、この二つの考え方の大きな違いは、帰属主義の場合は仮にその外国法人がPEの所在地とも違う別の第三国で所得がある場合に、それが外国法人ではなくPEに帰属すると判定されるような場合は、その所得も含めてPEの所在国で申告する必要がある、という点と、逆に総合主義の場合は仮に外国法人が別の国から得た所得について、それがその国に所在するPEに帰属しないものであっても、その国にPEがあるがゆえにその国での申告対象となってしまうという点です。

日本では国内法では総合主義でありながら、各国との租税条約上は国際的なスタンダードである帰属主義が採用されていたことから、永らくダブルスタンダードの状態が続いていましたが、平成28年度4月1日以降開始事業年度から国内法でも帰属主義が適用されることになり、租税条約と統一されることになりました。

 

PEの有無が争われたケース

外国法人の日本における施設がPEにあたるかについて争われた有名なケースでは、アマゾンの物流子会社のケースがあります。

このケースでは、アマゾンのオンラインショップの日本での売り上げは日本の消費者とアマゾンの米国法人との契約なので、日本で納税していなかったのですが、日本の国税はアマゾンの物流子会社の日本にある倉庫が米国法人のPEに該当すると判断し、追徴課税処分を下しました。

本来単なる倉庫であればPEにはあたりませんが、このケースでは米国法人からの指示の下、倉庫が物流以外の業務を担っていたりためPEと認定されました。ただし、このケースは結局日米二国間協議の結果、判断が覆され、日本での課税を取り消す結果に終わっています。

一方、日本国外で事業を展開する日本企業は逆に外国でPE認定を受けるとその所得に対する現地での課税が発生してしまいます。PE課税の大きな枠組みでは「PEなければ課税なし」という国際的なルールが存在するものの、PEの厳密な概念自体はいくつかのモデルがあり、どのモデルを採用するかによって各国でPEの定義に差異が存在し、またそれを解釈して適用するPE課税の実務についても各国で異なっている現状がありますので、事業を展開する国ごとに実務に即した対策をとる必要があります。