資本金は自由に使えない!?中国の資本金口座の制限とは?

 

日本でも会社の資本金の使途は会社の運営上必要な支払いに限定されます。
ただし実際には資本金を引き出したり、送金したりする時にその使途を証明する必要があったり、その使用が銀行によって制限される、ということはありません。
 
一方、中国では外貨管理において、経常項目は原則自由、資本項目は原則制限という制度が取られています。
すなわち、外資系企業による投資は資本の輸入であり、外貨管理局で登記した上でその使途も経営範囲に即しているかが厳格に管理されています。
 
この点が中国に進出した日系企業が資本金を使用する際の実務にも反映されており、原則として使途を証明しないと資本金からの支払いが認められないため、進出直後は銀行からの要求に戸惑われる方も多いと思われます。
以下では外資系企業が資本金口座の資金を使用する際、実務上よく直面する問題について紹介します。
 
まず外貨で資本金が払い込まれた場合、それを中国内で使う際には人民元に両替しなくてはなりません。
この両替については企業が為替レートなどを考慮の上、自由に元転が認められています。ただし、一旦人民元に両替した資本金は外貨転して外貨口座に戻し入れることはできません。
 
外貨から両替された、もしくは人民元で払い込まれた資本金は一月あたり20万米ドルを上限に会社の日常的な経費として使用する「手元準備金」(備用金)に振り替えることができます。
手元準備金に振り替えられた資本金の支払いは法令上はエビデンスの提示が不要とされていますが、実際のところ資本金による支払いの審査責任を銀行が負っているため、銀行によっては手元準備金への振り替えやその使用についてかなり細かくチェックされます。
通常は1回目に振り替えた手元準備金を使い切って2回目の振り替えを申請する際、1回目の使用明細を要求され、日常経費以外の支出がないかの確認の上、該当する支払いがあればエビデンスの提出が必要となります。
銀行は元転した資本金の支払いについて、事後の抜取検査を要請されていることから、企業単位で手元準備金からの支出のサンプルチェックをしています。
サンプルに選ばれてしまうと、本来エビデンスが不要なはずの手元準備金の支払いについて、全支出のエビデンスを要求されることもあります。
その中で日常経費以外の支出が多く見つかり、その後手元準備金への振り替えが認められなくなってしまったケースもあります。
 
手元準備金へ振り替えることのできる金額も一月あたり20万米ドルに相当する人民元額の場合もあれば、1回あたり100万元であったり、50万元であったり、とバラバラで、銀行毎に、場合によっては会社毎に運用が異なります。
筆者の印象では、中国系銀行の方が支店長とのコネクションがあれば色々な融通が利く面がある反面、手元準備金の管理については日系メガバンクの方が柔軟な印象があります。
 
また、日常的な経費とは、社員の給与やオフィス家賃、旅費交通費や消耗品の購入等が含まれますが、商品の仕入れや外注業者への支払い、オフィスや人材の仲介手数料や専門家費用などは含まれません。
そのため、これらの支払いは資本金口座(人民元支払待ち口座)から直接支払うことになります。
上海市や北京市などの一部地域では2017年以降資本金口座(人民元支払待ち口座)からの支払いの場合も一定の条件を満たせば原則エビデンスの提出は不要となり、支払指図による送金が可能となりました。
ただし実務上は資本金口座(人民元支払待ち口座)からの直接支払いは都度銀行に契約書や発票などのエビデンスを提出した上で、真実性を証明してからでないと送金できないことが一般的かと思われます。
更に、銀行によっては資本金口座(人民元支払待ち口座)からの支払いをインターネットバンキングで処理できる銀行と窓口で手続きを行う銀行があるため、注意が必要です。
 
 
 
参考規定:「外商投資企業の外貨資本金元転管理方式の改革に関する通知」(匯発[2015]19号)、「資本項目人民元転管理政策の改革と規範化についての通知」(匯発[2016]16号)、「クロスボーダー貿易・投資の利便化のさらなる促進に関する通達」(匯発[2019]28号)、「全域における資本項目外貨収入の支払に係る利便化試行を展開する通達」(上海匯発[2020]8号)、「北京地区資本項目利便化水準のさらなる向上に関する通達」(京匯[2020]16号)

 

 

 

 

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