海外子会社からのロイヤリティ徴収 税務上の注意点は?

 

ロイヤリティとは?

日本の本社が所有する特許権、製造ノウハウ、商標権、ソフトウェア等の著作権などの知的財産権を海外にある子会社に対して使用を許諾する場合、その対価として使用料を得ることが一般的ですが、この使用料のことをロイヤリティと言います。
 
ロイヤリティの金額は、通常知的財産権を使用することによって製造された製品の売上高にロイヤリティ料率をかけて算出します。
ロイヤリティに関する税金は、支払者(ライセンシー)の所在する国で生じた所得として、その国での源泉徴収による課税を受けます。
 
以下では、海外子会社からロイヤリティを徴収する際に生じる税務上の諸問題について、いくつかの注意すべきポイントをご紹介します。
 
 

ポイント① 料率

ロイヤリティの金額は通常売上高に対して料率をかけて計算しますが、その金額が独立企業間価格に満たないときは、移転価格税制上、独立企業間価格で行われたものとみなされます。
 
独立企業間価格というのは、同じ状況でもし国外関連者でない第三者と取引した場合に成立する価格のことです。
そして、そのロイヤリティ料率が独立企業間価格に満たない部分は経済的利益の無償供与として寄附金認定され、全額損金不算入となります。
 
そのため、適正な料率を設定する必要がありますが、この算定方法には、マーケットアプローチ、コストアプローチ、インカムアプローチなど複数の考え方があります。
 
これらの複数の方法の中から合理的な算定結果を採用することになりますが、実務上はロイヤリティ支払後の営業利益率を同業他社と比較することによって移転価格が異常な水準になっていないことを検証する「取引単位営業利益法(TNMM法)」を使用することが一般的です。
 
ロイヤリティを算定する上で、契約書上は特許権の使用に限定されている場合であっても、実際には特許権を含む広範な製造ノウハウや技術の提供がされている場合は、それを移転価格上加味しているかどうかという点には注意が必要です。
 
 

ポイント② 源泉税

海外子会社からロイヤリティを徴収する場合、現地での国内法に基づいて源泉課税の有無を確認する必要があります。
例えば中国では、ロイヤリティの源泉税率は10%、香港は4.95%、シンガポールは10%となっています。
 
さらに、日本と租税条約を締結している場合は、租税条約によって税率を低減、免除している場合もあり、その場合は租税条約が国内法に優先して適用されます。
アメリカ、イギリスの国内法でのロイヤリティの源泉税率はそれぞれ30%、20%ですが、日本に対して支払う場合は租税条約により0%となります。
 
 

ポイント③ 間接税

上記に加え、付加価値税や売上税などの間接税がかかる国もあります。
例えば中国ではロイヤリティに対して付加価値税である増値税6%に加え付加費が課されます。これは知的財産権の譲渡等でない限り日本との租税条約でも免除されません。
 
契約書上のロイヤリティの料率及び金額についても、増値税を日本の本社が負担するかどうかで税込とするか税抜とするかを決めておく必要があります。
 
 

ポイント④ 外国税額控除

日本の本社が海外子会社から受け取るロイヤリティに源泉税が課され、さらに日本でもそれが課税対象になると二重課税が発生してしまいます。
 
この問題に対し、日本では国外で源泉課税された所得も課税対象として計算された国内の課税額から、国外で課された源泉税額を控除することができる外国税額控除という制度によって二重課税を排除しています。
 
ただし、外国税額控除の対象となる税金は、「法人の所得を課税標準として課した税金」に限られます。
つまりロイヤリティという所得に対する源泉徴収税は税額控除の対象ですが、売上高に対して課される売上税や関税、付加価値税等の間接税は対象外ですので、中国で課された増値税も控除できないこととなります。
 
さらに一部の国との租税条約においては、実際に課された源泉税とは異なる税率で課税されたものとみなして控除することのできるみなし税額控除と呼ばれる規定を定めている場合があります。
例えば、中国にある子会社から受け取るロイヤリティには中国で10%の源泉税が課されますが、日中租税条約により日本での課税計算上、中国で20%の源泉税が課されたとみなして20%分を控除することが可能です。
 
 
 
参考規定:法人税法、租税特別措置法、移転価格事務運営指針