海外移住に際して必要となる税務上の手続きとは?

 

海外に移住することが決まり、出国の日付が決まればそれまでに色々と日本でしておくべきことが生じます。
 
以下ではその中で特に出国までに行っておくべき税金に関する手続きをご紹介します。
 
 

納税管理人の届出

海外移住後も日本で不動産収入があったり、事業収入があったりする場合には日本で発生した所得について確定申告や納税が必要となりますが、そのために納税管理人を選定し、届出をしておく必要があります。
 
納税管理人とは、日本に住所がない人に代わって税金に関する申告などの手続きを処理するための人のことを言います。
この届出自体は書面1枚の簡単なもので、税理士でなくても日本居住者であれば法人でも個人でも誰に依頼しても構いません。
納税管理人の届出をすると、海外移住後の税務署からの連絡等は納税管理人宛に行われるようになります。
 
 

確定申告

海外に移住する場合はその出国の日までにその年の1月1日から出国日までの所得を計算し、確定申告を行う必要があります。
上記の納税管理人を届け出ている場合は、出国後は納税管理人が税金に関する手続きを処理することになりますので、確定申告期限は通常通り翌年3月15日までとなります。
その場合、1月1日から出国日までの全世界所得と出国日の翌日から12月31日までの国内源泉所得が申告対象となります。
 
なお、海外に移住する前の10年間の間に5年を超える期間を日本で暮らしており、移住時点で1億円以上の有価証券等を保有している場合は出国税(国外転出時課税制度)の対象となり、その資産の含み益に課税されることとなりますので移住の際の確定申告には当該所得も含めて申告する必要があります。
(一定の要件を満たす場合は納税猶予が認められます。)
 
 

国外転出届

住民税は、前年の所得に対して、原則としてその年の1月1日現在の住所地の市町村で課税されます。
サラリーマンの場合は特別徴収と呼ばれる方法によりその年の6月から翌年5月までの給与から毎月天引きされますが、もし1月1日に住民票が国内にあるとその後に出国しても6月に1年分の税額通知書が送付されます。
 
そのため、もし年末年始付近に出国を予定しているのであれば、できれば1月1日の前までに住所のある市町村に「国外転出届(住民異動届)」を提出しておく必要があります。
 
 

租税条約の届出

移住先の国と日本との間の租税条約により、退職年金の源泉地国での課税が免除される場合があります。
該当する国に移住後に日本で退職年金を受け取ることが想定される場合には、租税条約の届出を行うことにより、日本で受け取る退職年金について日本で税金を納めなくてよいこととなります。
このような規定は香港やシンガポール、中国、オーストラリア、マレーシアなど、2018年1月1日時点で67カ国との間での租税条約の中で定められており、これらの国に移住する場合は日本での退職年金の課税が免除されます。
 
上記は規定上あくまで源泉地国(日本)ではなく居住地国(移住先)での退職年金の課税を認めるという趣旨なのですが、香港やシンガポール、マレーシアなどではそもそも国外源泉所得には課税されませんので、日本で受け取る退職年金は移住後はどこからも課税されないこととなります。