ビットコインFXは出国税(Exit Tax)課税?今後の仮想通貨の取扱いは?

出国税(Exit Tax)とは?

出国税とは、正確には国外転出時課税制度と言います。

これから海外に居住しようとする人が、一定の要件に該当する場合、転出時点で保有する資産を譲渡したものとみなしてその含み益に課税する制度です。
これまでは巨額な含み益を抱えた資産を保有したままキャピタルゲインのかからない国に移住した後にその資産を売却すると、日本での税金を回避することができたので、そうした行為を防ぐために2015年7月1日から国外に転出する場合に適用されることになりました。

対象者

次の2点のどちらにも該当する日本居住者が対象となります。

  • 国外転出の時に所有等している対象資産の価額の合計額が1億円以上である
  • 原則として国外転出の日前10年以内において、国内在住期間が5年を超えてい る

2点目は、普通に日本で暮らす日本人の方は過去10年間の内大変は日本に居住していると思いますので、その場合は資産総額で1億円を超えるかどうかで判定することになります。

対象資産

対象資産は所得税法第60条に下記のように限定列挙されています。

  • 有価証券(株式や投資信託など※)
  • 匿名組合契約の出資の持分
  • 未決済の信用取引・発行日取引
  • 未決済のデリバティブ取引(先物取引、オプション取引など)

※ 対象資産の有価証券の範囲から次に掲げる有価証券で国内源泉所得を生ずべきものを除きます。
① 特定譲渡制限付株式等で譲渡についての制限が解除されていないもの
② 株式を無償又は有利な価額により取得することができる一定の権利で、その権利を行使したならば経済的な利益として課税されるものを表示する有価証券

納税猶予制度

納税管理人の届出をするなど一定の手続を行った場合は、国外転出の日から5年間(延長の届出により最長10年間)納税を猶予することができ、その期間内に帰国した場合は課税の取消しが可能です。

 

仮想通貨は対象外?

では、保有する仮想通貨が多額の含み益を抱えており、この状態で国外に転出する場合には出国税の対象となるでしょうか?

これは仮想通貨が上記の対象資産の中の有価証券にあたるかどうかが問題となりますが、有価証券は一般的に財産法上の権利や義務の記載を伴う物理的な証書を前提としていますので、単なる電子記号である仮想通貨は現行法では有価証券には該当しません。

そのため、対象資産のどれにも該当せず、現時点では出国税の対象外だと思われます。

 

ビットコインFXは対象?

では、ビットコインFXはどうでしょうか?
ビットコインFXは一般的な定義の上では金融デリバティブ取引に該当しますので、ビットコインFXで含み益を抱えている場合は上記の対象資産4つ目の未決済のデリバティブ取引に該当しそうな気がします。

そのため、もう少し詳細に条文を見てみましょう。

所得税法第60条第2項第3号
国外転出をする居住者が、その国外転出の時において決済していない金融商品取引法第二条第二十項(定義)に規定するデリバティブ取引(以下この条から第六十条の四までにおいて「未決済デリバティブ取引」という。)に係る契約を締結している場合には、その者の事業所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その国外転出の時に、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額の利益の額又は損失の額が生じたものとみなす。

この条文では「金融商品取引法第二条第二十項(定義)に規定するデリバティブ取引」とあり、金商法での規制下にあるデリバティブ取引のみを対象としていることがわかります。

本稿執筆時点で、仮想通貨は資金決済法という法律によって規制されている状況です。そのため、ビットコインFX取引を提供するビットフライヤーなどの仮想通貨取引所は、金商法で定める金融商品取引業としてではなく資金決済法の登録業者ですので、金商法で規定するデリバティブ取引には該当せず、出国税の対象外と思われます。

ただし、2017年12月に東京金融取引所がビットコイン先物を上場する計画を発表しています。今後東京金融取引所のような金融商品取引所がビットコインのデリバティブを扱うことになる場合は、市場デリバティブ取引に該当するため出国税の対象になると思います。

 

今後の取扱いは?

国外転出時課税制度は仮想通貨の売買が今のように活発になる前に制度化されたものですので、仮想通貨の値上がり益を持って海外に移住するようなケースはそもそも想定されていません。
そのため、今後そのような移住者が増えると法改正により出国税の対象となることも十分考えられます。

その場合、所得税法の改正によって、国外転出時課税制度自体の条文が改正され、仮想通貨が明記される可能性もあれば、今後仮想通貨取引自体が金商法の対象となり、取引所が金商法の登録を義務付けられることになれば、国外転出時課税制度自体は現行の条文のままでも仮想通貨が出国税の対象となることも考えられます。

 

(※本記事は2018年1月24日時点の法令を基に執筆され、それ以降の法令改正の影響を反映しておりません。最新の情報については専門家或いは税理士にお問い合わせください。)

参考規定:所得税法、金融商品取引法、資金決済法