デジタル発票(数電発票)、電子発票との違いって?
これまで中国では納税証憑として発行される「発票」の電子化が進められてきました。
2015年から増値税普通発票、2020年からは増値税専用発票を対象に、地域毎に電子化が段階的に進められ、今では我々の日常生活においてもレストランでの食事やスーパーでの買い物など、発票を受け取る場合はレシートに印刷されたQRコードなどを読み取って電子発票のデータをオンラインで受け取ることが一般的です。
ただし、これらの電子発票と最近更なる普及が進められている全面デジタル化電子発票(「デジタル発票」、中国語では「数電票」、「全電発票」)とは厳密には同じではありません。
それでは、今現在普及が推進されている「デジタル発票」とこれまでの電子発票はどのような違いがあるのでしょうか?
1.電子発票は紙発票を電子化したもの
まず、これまでの電子発票ですが、紙媒体の発票と比べて発票専用印の捺印が不要になったり遠隔地にいる相手への郵送の手間が省かれるなど利便性が向上したものの、基本的な仕組みにおいて単に紙媒体の発票を電子ファイルに置き換えたもの、という点に留まります。
一方で、デジタル発票は従来の電子発票の発行システムとは異なるオンラインプラットフォームが採用されており、これを通じて発票の発行、交付、確認といった一連の作業を同一プラットフォーム上で行うことにより、発票を税務上の売上と費用に紐づけることによって徴税管理を行う「以票管税」から、発票を含めた企業活動をデジタルで捕捉する「以数治税」への転換が図られています。
2.発行プロセスの簡素化
これまで企業が電子発票や紙発票を発行するためには、事前に管轄税務局より発票の交付を受け、その発行枚数や1枚当たりの上限金額は企業毎に厳格に管理されていました。
また、発票の発行に際しても専用プリンターや税控設備と呼ばれる物理的なデバイスを使用して、発行した発票の情報をアップロードする必要がありました。
そのため、こうした設備は通常オフィスで保管されていることから、新型コロナ禍のロックダウン期間中に全社員が在宅勤務となり、かなりの長期間発票が発行できずに売上の回収が滞る、などのトラブルは記憶に新しいと思います。
そのため、こうした設備は通常オフィスで保管されていることから、新型コロナ禍のロックダウン期間中に全社員が在宅勤務となり、かなりの長期間発票が発行できずに売上の回収が滞る、などのトラブルは記憶に新しいと思います。
一方、デジタル発票ではこうした発票の枚数制限や1枚当たりの上限金額等の制限は撤廃され、企業毎の各月の発行総額管理とされました。
また、発行時は各地の「電子税務局」サイト内のオンラインプラットフォームを通じて発行することができ、ネットワーク環境があればどこからでも発行が可能です。
発行された発票は自動で受取側のアカウントに反映されるので、メール等に添付して顧客に送る必要もありません。
3.会計資料の電子化
現時点ではデジタル発票への移行が経理業務全体の効率化や省力化に与える影響は軽微だと思われます。
すでにデジタル発票の発行が半ば強制されている地域でも、実務上はデジタル発票をメール或いは紙に印刷して送付し、受取側は発票と支払額とを照合の上記帳を行い、記帳伝票と併せて紙に印刷したデジタル発票をファイリングする、という実務が一般的です。
会計資料の保管ルールを定めた各規定においても、電子保管が認められるのは一定の条件を満たす場合のみとされており、多くの企業にとって会計資料の完全な電子化は現時点で現実的でないと思われます。
しかし、今後の「以数治税」の方向性で示されるように、デジタル発票サービスプラットフォームは企業のERPシステム等との連携を通じて、発票発行業務のみならず発票情報の仕訳への取り込みや購買管理、販売管理情報への反映など様々な領域におけるデジタル化を推進できる拡張性の高い仕様となっています。
そのため、企業のDX推進に伴い、会計資料の電子化も徐々に浸透することが想定され、デジタル発票とそのプラットフォームは企業のDXを支える一翼を担うものとして期待されています。
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