中国企業からのサービスフィーの回収、必ず中国で課税される?
中国の会社或いは子会社との取引がある日本の会社からいただくご相談の中で、最も多いものの一つに、中国の会社からの費用回収時に中国で源泉徴収が発生するか事前にわからない、或いは中国子会社からの送金について、源泉徴収されている税金の詳細がわからない、といったものがあります。
特にサービスフィーの送金の場合中国における法人税である企業所得税が源泉徴収されることが一般的ですが、必ず源泉徴収が発生するのでしょうか?
また、そうであればなぜよくわからない、という問題が生じるのでしょうか?
①日本からサービス提供するパターン
まず、コロナ禍でますます増えているのが、資本関係のない中国企業に対し、一度も中国に行かずに日本からサービス提供や知的財産権をライセンシングし、対価を得るという取引です。
サービスの対価を得る場合、中国の企業所得税法ではそれが中国国内源泉所得に該当する場合課税されることになりますが、国内源泉所得に該当するかどうかは「役務の発生地」が中国内にあるか否かによるものとしています。
そのため、上記のような日本からサービスを提供する取引は役務の発生地が日本であることから、中国の国内源泉所得にあたらず、従って企業所得税も発生しないこととなります。
一方で知的財産ライセンシングの対価である場合は、日中租税条約に基づき10%の源泉企業所得税が発生することが定められています。
②中国でサービス提供するパターン
続いて、完全に日本から提供するサービスではなく、中国内で提供するもの、例えば日本の本社から技術者を派遣し、中国の子会社にて一定期間技術指導を役務として行うようなケースについて考えてみます。
この場合は、上記の企業所得税法の規定に従い、役務の発生地が中国なので中国国内源泉所得にあたりますが、企業所得税が課税されるか否かは、中国内に日本本社のPEが存在するか否かにより異なります。
日中租税条約第7条では、「日本企業の利得に対しては、それが中国内のPEを通じて中国内で行われない限り、日本においてのみ課税することができる」と定めているため、PEが存在しない限りは同条文を適用することにより、中国で課税がされないこととなります。
同条文を適用するためには、5万USD以上の送金の場合、対外支払いの税務届出時に「非居住者納税者の協定待遇の享受に関する情報報告表」を提出し、かつ日本の税務当局の発行する居住者身分証明などの各種資料を事後管理のために保管しておく必要があります。
もし中国内にPEがあると見なされる場合は、同条文は適用できず、企業所得税が源泉徴収されることとなります。
その際、上記のサービスに対して利益率を見積もったうえで25%の企業所得税率を乗じて課税額が算出されますが、国外企業が課税所得を正確に計算できない場合は、税務局が見なし利益率に従って課税できる、と定められています。
見なし利益率については、(i) エンジニアリング作業の請負、設計、コンサルタント業務に従事する者は15%~30%、(ii) マネジメント業務に従事する者は30%~50%、(iii) その他の労働または労働以外の事業活動に従事する者は15%を下回らない、とそれぞれ規定されています。
③実務上の運用
ただし、実務上はPEが存在しないケースであっても、源泉徴収をしていないと送金時の税務届出を受理してもらえない、という事情や後から源泉徴収義務を怠ったと税務当局から指摘を受けるリスクを懸念して、中国側の実務担当者にとっては役務対価=源泉徴収して納税した上で送金、という実務が定着している実態があります。
これにより、理論上の課税関係の複雑性も加わって、結局送金手続きをしてみないと中国で企業所得税がいくら差し引かれていくら送金されるのかがわからない、という問題を生じさせています。
(中国から日本への送金手続きについてはこちら)
参考規定:「企業所得税法」、「企業所得税法実施条例」、「日中租税協定」、「非居住者及び住所の無い居住者の個人所得税政策についての公告」(財政部・税務総局公告[2019]35号)、「非居住者企業所得税査定徴収管理弁法(国税発[2010]19号)
【中国ビジネス顧問サービスのご案内】
弊社の中国ビジネス顧問サービスでは、足の早い中国の法規制のアップデートに迅速に対応するため、法改正の情報等をタイムリーにご提供するとともに、各種のご相談に対応させていただきます。
弊社の中国ビジネス顧問サービスへのお問い合わせは、こちらからお願いいたします。