ビッグデータを活用した税務調査のチェック項目とは?
中国の税務申告管理システムは金税三期システムと呼ばれ、税務局はこのシステムを通じて企業の膨大な税務・財務データを活用し、租税の徴収管理に役立てています。
具体的にはビッグデータにより一定の傾向を把握し、システム上で税務リスクのある企業を検知、抽出することができるようになっていますが、いくつかの主要項目においては主に下記のような内容のチェックを自動で行っています。
①収入
収入の過少計上を検出します。発行した発票や販売した商品との照合に加え、取引企業側の仕入れといった財務データとの整合性も加味した検証を行います。また、業種等による一定の傾向値をビッグデータにより検討し、原価や経費の金額や内容から収入の過少計上のリスクを判断しています。
②費用
費用の過大計上を検出します。原価率や販管費率の異常をビッグデータを通じて検証し原材料や商品原価の見積計上のリスクを検知します。また、中国では特に発票の発行を要求しないことを条件に価格交渉を行うことがありますが、正式な発票無く或いは偽発票による費用計上は当然金税三期システムにおいても厳しく管理されています。
③在庫
一般的な粉飾決算などは在庫量を帳簿上で架空に計上したり、或いは逆に払い出した在庫を計上しないことによって操作することがよくあります。金税三期システムでは一定期間継続的に在庫が増え続けているなどの状況が見られると在庫に関する税務リスクがあると判断します。
また、サプライチェーンの上流、下流に位置する取引先企業の財務データと会社の仕入データ、販売データを在庫量と紐づけ、整合性を自動でチェックしています。
④銀行口座
銀行取引についても自動検証の対象となっています。取引先からの入金記録があるにも関わらず売上に含めていない、或いは申告されている費用に対応する口座からの出金がないといった不自然な取引についても、以前は現場での税務調査によってしか確認ができませんでしたが、現在は銀行取引を調査対象のデータに加えることにより一定程度異常な取引を識別可能となっています。
⑤未払税額
増値税の納付額は会社の粗利をベースとした金額と概ね一致することになりますので、不自然な乖離が見られる場合は税務リスクとして認識されます。
或いは、期末在庫の金額が未控除の仕入増値税額と乖離している、地税へ申告している付加税の金額と国税への増値税額との間で不整合が生じている、払込資本金を増資したにも関わらず印紙税の申告額が0となっている、などに加え企業所得税納付率が長期に亘り低水準である、過年度と比較して納税額の変動が大きいなど色々なパターンを通じて納税額自体の異常も判定する仕様となっています。
上記の他にもいくつも項目はあるようですが、主だったものをご紹介しました。
ビッグデータによるあらゆる企業のデータを集めて調査をすることの利点はもちろん調査人員の省力化という点もありますが、課税逃れが疑われる取引について合わせて取引先側からも調査を行う日本でいうところの反面調査も効果的かつ手広く実行できる点だと思います。
また、本来属人的に蓄積されてきた業種毎、ビジネス毎の傾向についても個人単位では把握不可能なボリュームのデータを解析することでより精度が高まっていくと思われる点です。
こうした税務調査の効率化や透明化は、一般的にローカル企業よりもきちんと申告、納税している日系企業にとっては概ね歓迎すべきものと思いますし、こうしたノウハウは会計監査の業務とも重複する部分がありますので、個人的にはどんどん自動化を進めてもらいたいと思うところです。
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