中国投資にかかる配当源泉税の繰延措置の概要とポイントを解説!
日本から中国に投資し、中国で獲得した利益を配当として回収する際には中国で配当金額の10%の源泉所得税が課されます。もし香港を通じた投資で中国香港間の租税協定を適用する場合は5%の源泉所得税になります。
そのため、中国で投資性公司や地域統括拠点を設立してそこから各中国会社に投資することのメリットとして、利益配当時に源泉税がかからず再投資ができる、という点がよく指摘されてきました。
これに対し、2017年12月及び18年1月に国外投資会社への配当であっても一定の場合は配当にかかる源泉税を繰り延べることができる新規定が公布されました。
以下ではその概要とポイントについてご紹介します。
概要
2017 年 12 月 21 日付で財政部、国家税務総局、国家発展改革委員会、商務部の連名により「国外投資者の配当利益の直接投資に対して源泉徴収税を暫定的に徴収しない政策に関する通知」(財税[2017]88号)が公布されました。
また、この通知を手続き面から補足するものとして2018年1月2日付で国家税務総局より「国外投資者の配当利益直接投資にかかる源泉所得税を暫定的に徴収しない政策の関連執行問題に関する公告」(国税発[2018]3号)も発布されました。
この中で、国外投資者が中国国内企業の配当利益を奨励類投資項目に直接再投資し、且つ一定の条件を満たす場合、源泉所得税の徴収を繰延べすることができる旨が規定されています。
(2018年10月9日追記)
2018年9月29日公布の通達により、再投資の対象が奨励類項目から全ての非禁止項目へと拡大しています。
(対中再投資の源泉税繰延対象が非禁止項目に拡大)
適用条件
では、その適用条件とはどのようなものでしょうか?
上記の規定では、以下の4つ全てを満たす必要があるとされています。
①国外投資者が配当利益で以下のいずれかの投資を行うこと。
- 中国国内企業の資本金または資本剰余金に対する増資
- 中国国内において会社の新規設立
- 中国国内において非関連企業の持分買収
- 財政部、税務総局の規定するその他の方式
②国外投資者の得た配当利益が、中国国内企業のすでに実現した留保利益によって形成された配当、利益分配等の持分性投資収益に該当すること。
③国外投資者による配当利益の再投資は、直接現金、現物、有価証券等を投資先企業の口座に振り込むかもしくは所有権を移転すること。つまり別の口座を経由して間接的に出資したり、一時的にその他の企業や個人が所有権を保有することはできない。
④投資先企業が国外投資者の投資期限内に「外商投資産業指導目録」内の奨励外商投資産業目録か「中西部地区外商投資優勢産業目録」に規定されている産業の範囲内で経営活動を行っていること。
なお、ここでの「経営活動」とは、以下を指します。
- 製品の生産またはサービスの提供
- 研究開発活動
- 建設工事への投資または機械設備の購入と設置
- その他の経営活動
ポイント
適用はいつから?
2017 年 1 月 1 日より遡って施行され、国外投資者が 2017 年 1 月 1 日以後に取得した配当金等の投資収益に対して適用されます。
2017年度の利益のみ対象?
2017年度以後の配当が適用対象となります。そのため、2017年度以後の配当であれば2016年度以前に稼得した利益であっても適用可能です。
配当企業とは別の企業への投資も可能?
本規定は特定企業への再投資ではなく、中国への投資を促進することを目的としているため、再投資先は利益配当した企業に限定されません。
中国上場企業への再投資も可能?
本規定の対象となる再投資は、増資や非関連企業の持分買収の条件に合致していても、中国上場企業は対象外です。
過去の配当についても遡って適用できる?
過去3年間までは遡って支払った配当源泉所得税の還付申請が認められています。
参考規定:企業所得税法、外商投資産業指導目録、中西部地区外商投資優勢産業目録、「国外投資者の配当利益の直接投資に対して源泉徴収税を暫定的に徴収しない政策に関する通知」(財税[2017]88号)、「国外投資者の配当利益直接投資にかかる源泉所得税を暫定的に徴収しない政策の関連執行問題に関する公告」(国税発[2018]3号)
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