中国 個人所得税の外国人優遇措置は21年末まで継続

 

先日公布された新しい個人所得税法実施条例においては、意見募集稿にあった外国人に適用される優遇措置の選択適用に関する条文が削除されていました。
 
 
 
これに対し、2018年12月28日にこれまでの優遇措置の新個人所得税法施行に伴う移行措置をまとめた「個人所得税法改正後の優遇政策に関する問題の通知」(財税[2018]164号)が公布され、外国人の優遇措置や年1回賞与の計算方法が2021年末までは引き続き適用できることが明らかとなりました。
2022年以降は上記の優遇措置は廃止されますので、2022年以降は外国人にとってはかなりの増税となることが予想されます。
 
 
 
当通知にて規定されている項目の内容(一部抜粋)は下記の通りです。
 
 

1.年1回賞与

居住者が取得した年1回賞与は、2021年12月31日までの間は、当年度の総合所得に合算せず、12ヶ月で除した金額を元に税率を当てはめ、全年一次性賞与として単独計算ができる。
 
計算公式は下記の通り:
納税額=年1回賞与×適用税率ー速算控除額
 
一方で年1回賞与を当年度の総合所得に加えて計算する方法を選択することもできる。
2022年1月1日以降に居住者が取得した年1回賞与は当年度の総合所得に加えて計算する。
 
 
 

2.上場株式インセンティブの取得

居住者がストックオプション等の株式インセンティブを取得する場合、2021年12月31日までの間は、当年度の総合所得に合算せず、単独で総合所得税率を適用し税額を計算できる。
 
計算公式は下記の通り:
納税額=株式インセンティブ収入×適用税率ー速算控除額
 
居住者が年に2回以上株式インセンティブを取得する場合、合算して上記の計算方法により計算する。
2022年1月1日以後に居住者が取得した株式インセンティブは今後の規定により改めて明確化する。
 
 
 

3.保険販売員および証券仲介業者の手数料収入

保険販売員および証券仲介業者の手数料収入は労務報酬所得に属し、増値税を除いた収入より20%の費用を減額した後の残高を収入額とする。収入額からマーケティングコストや付加税を減額した金額を総合所得に合算し、税額を計算する。
保険販売員および証券仲介業者のマーケティングコストは、収入額の25 %として計算される。
 
 
 

4.企業年金および職業年金

定年時に取得した企業年金、職業年金は当年度の総合所得に合算せず、単独で総合所得税率を適用し税額を計算できる。
月ごとに受け取る場合、月度税率表によって納税額を計算し、四半期ごとに受け取る場合は、月次平均額を月度税率表に適用して納税額を計算する。年単位で受け取る場合、総合所得税率表を適用し、納税額を計算する。
 
 
 

5.労働解雇、早期退職等の一次性経済補償金

・労働解雇により取得した一次性経済補償金(経済補償金、生活補助費及びその他の補助費を含む)は、現地の平均賃金の3倍以内の部分は個人所得税を免除する。
3倍の額を超えた部分は、当年度の総合所得に合算せず、単独で総合所得税率を適用し税額を計算できる。
 
・早期退職によって取得された一次性補助収入は下記の公式により計算する:
 
納税額={〔(一次性補助収入/早期退職年度から法定定年年度までの年数)-費用控除標準〕×適用税率-速算控除額}×早期退職年度から法定定年年度までの年数
 
 
 

6.会社から従業員への低額住宅譲渡

企業が従業員に住宅を低額譲渡する場合、差額部分は当年度の総合所得に合算せず、下記の公式により計算する:
 
納税額=従業員が実際に支出した代金と住宅の購入原価或いは建設原価との差額×適用税率-速算控除額
 
 
 

7.外国人に支給する諸手当

・外国人が中国居住者の条件を満たしている場合、2021年12月31日までの間においては、個人所得税法における追加控除項目を適用するか、或いは現行の住宅手当、語学研修手当、子女教育手当等の免税優遇政策を選択適用できるが、同時に両方を選択することはできない。
また、選択適用後は同一年度において変更もできない。
 
・2022年1月1日より、外国人は現行の住宅手当、語学研修手当、子女教育手当等の免税優遇政策を適用できなくなり、追加控除項目のみが適用可能となる。
 
 
 

 8.上記の関連事項以外

上記の関連事項以外の個人所得税優遇政策については、引き続き元文書に従って執行する。
 
 
 
 
参考規定:「個人所得税法改正後の優遇政策に関する問題の通知」(財税[2018]164号)

 

 

 

 

2019年1月からの新個人所得税法施行に向け、日系企業の皆様におかれましては中国人、日本人出向者ともにこれまでの所得税申告業務のプロセスを見直し、適正な納税を担保するための体制を整えておく必要がございます。
中国人の申告においては、これまで比較的シンプルであった基礎控除の他、各種の特別控除項目が規定され、源泉徴収義務者として従業員からのより広範な情報収集が必要となります。
出向者の申告においては、依然不明確な点も多く、引き続き動向を注視しながらタイムリーな情報のアップデートとその迅速な対応、及び専門的な判断が必要となる場面が想定されます。
 
モンドパルコンサルティングでは、上記の新法適用に向け、その対策をはじめとする中国個人所得税各種コンサルティング、コンプライアンス業務のサポートを提供しております。
 
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