中国 統括会社って何?そのメリットとは?

 

中国での統括拠点設置について、中国に複数の事業拠点をお持ちの会社様からお問い合わせを受けることが多くなってきました。
 
これは2015年に投資性公司の設立要件が緩和されたことが一つのきっかけになっているようですが、それでは統括会社とはどのようなもので、中国に統括会社を設置することでどのようなメリットがあるのでしょうか?
 
 

統括会社って何?

中国の法令において、統括会社の定義を明確に定めたものはありません。
 
一般に統括会社と呼ばれる場合、多国籍企業が地域単位で事業戦略の立案や管理を行う地域本社を指し、中国における統括会社は中国全土を統括する場合と、中国を含めた東アジア、或いはアジア全体を統括する場合があります。
 
組織の形態としては投資性公司、管理性公司、その他に分類できます。
投資性公司は投資業務それ自体を営業許可の範囲で行うことができ、国家レベルの法規を根拠としています。
管理性公司は主に中国内のグループ会社の管理を目的として設立された会社であり、他にも通常の一般性外商投資公司であって単にグループ会社にコンサルティングサービスを提供している会社を統括会社と呼ぶこともできます。また駐在員事務所が情報収集の範囲で一定の統括機能を有している場合も見受けられます。
 
投資性公司と管理性公司の最大の違いは、投資性公司はその経営範囲に投資を行うことを含めることができる点です。
これにより直接の投資者として中国内の各子会社に対してガバナンスを及ぼすことが期待され、また最終的には株主としての法に基づく権利行使が可能です。
 
管理性会社の場合はあくまで出資者の立場からではなく、種々の管理サービス、シェアードサービスを通じて子会社を監督することになりますので、各子会社の視点からは統括会社の要請への対応は義務ではなくサービスの押し売りのように見えがちで、出資者に比べどうしてもその権限は弱いと言わざるをえません。
この点、中国への投資が全て独資で行われるようなケースでは、適切な人材配置などによりこうした権限の弱さを部分的に補うことは可能ですが、合弁での投資が多数を占める場合には中方に対する影響力という点ではやはり法的な支配力を持っているかが非常に重要になります。
 
 
 

統括拠点のメリット

それでは中国内に統括会社を設置するメリットはどのようなものでしょうか?
 

機能上のメリット

まず機能的なメリットについては、中国の市場変化のスピードに合わせて意思決定権限を現地で担うことにより意思決定の迅速化を図り、これまでの事業部による縦割りの経営体制を刷新し、中国事業の横断的な展開を可能にする体制を構築するという点はよく挙げられるところです。
ただし、その実効性を担保するためには合わせて統括会社に適切な経営人材を配置し、結果責任を負うことによって初めて実現するものとも言えます。
 
戦略策定、意思決定のみならず、オペレーションの面においても様々な機能を担うことができます。
サプライチェーンにおいては調達機能の一元化、マーケティング、物流管理、またバックオフィスにおいては人事、総務、財務、法務、広報、ITについて企業の実情に応じて機能の分担や拡充が可能です。
 
特に調達や総務などの購買を要する部門では地元の企業と癒着した不正の温床となりやすいため、統括会社での一括購買や、それでなくてもベンダーの選定や決済の承認プロセスに統括会社が関与することで日本からでは難しい統制の強化が可能となります。
 
最近は比較的子会社数の少ない企業の統括会社設置がトレンドとなっているため、サプライチェーンの機能重複による非効率を是正するという側面よりも、日本国内でも好景気による人材不足で海外子会社に十分な人員を派遣できない、或いはコストカットのために出向者を減らすといった傾向の中で、管理業務についてはある程度統括会社に集約することにより、各子会社に常駐する管理担当の日本人がいなくても一定の統制レベルを確保する、あるいはグループ子会社間での管理体制の平準化を実現することを目的としたケースが多いように思われます。
 

税務上のメリット

また、税務面でのメリットとしては投資性公司であれば各子会社への出資が前提となるので、出資先からの配当を受け取ることになります。
日本の本社からの直接投資の場合、日本への配当には10%の源泉税が課されますが、中国内での配当についてはこれがかからず、無税で新規投資が行えることが税務上のメリットとなっています。
 
ただし2018年からは国外への配当であってもその資金を中国の非禁止項目に再投資する場合は源泉税を繰り延べる措置が施行されているため、投資性公司の税務上のメリットは薄れている状態です。
 
 

地域統括本部としての優遇措置

また、上記の統括会社の定義にて触れましたが、地域統括本部の認定を受けることにより優遇措置を適用することができます。
 
地域統括本部は国家レベル、または地方政府レベルの規定において定められており、国家レベルの地域統括本部として認定されるためには少なくとも5,000万USDの払込資本が必要となるため、中国事業がかなり大規模なものでなければ認定のハードルは非常に高いものとなっています。
 
地方政府レベルの地域統括本部は中国での累計登録資本金額が1,000万USD以上で管理対象会社3社以上であること、登録資本金額が200万USD以上であることなどいくつかの要件がありますが、国家レベルの地域統括本部と比較してハードルはかなり低くなっています。
 
地域統括本部の認定を受けると、国家レベル、地方政府レベルに応じて設立補助金、事務所賃料の補助、奨励金、行政手続きの優先対応や出入国手続の簡便化、所在都市での従業員の戸籍申請など、種々の優遇を享受できることとなります。
 
 
 

投資性公司の設立要件って?

ちなみに、冒頭で投資性公司の設立要件が緩和されたと記述しましたが、これまで投資性公司を設立する際には、最低登録資本金額が3,000万USD以上で、更に設立後2年以内にその内3,000万USD以上を払い込む必要がありました。
 
この要件が2015年に撤廃されたことにより、現在でも地域によって商務部門や外資系企業の誘致を担当する部門から一定規模の新規投資を要求されることはあるものの、法令上は資本金額がいくらでも設立が可能な状況になっています。
 
 
 
 
 
 

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