中国進出 進出形態と法人設立手続きのまとめ
1.進出形態
中国への進出にあたって、以下のいずれの形態で進出するかを検討する必要があります。
①外商投資企業
外国法人又は外国人が出資して設立された中国法人は外商投資企業と呼ばれ、以下の3つの形態に分類されます。これら3つの形態の法人を総称して三資企業とも呼ばれます。
A.独資企業(WOFE)
独資企業とは、外国の出資者によって100%の持分を出資された中国国内の法人です。
中国では外国の出資比率に制限のある業種もあるため、その場合は独資企業として会社を設立することはできません。独資企業は、近年の中国進出形態の主流となっています。100%出資であることから完全に本社の判断で経営上の意思決定を行うことができ、また監督体制も十分機能させることが可能ですが、逆にそのことがスピード感のある事業展開の妨げとなってしまうこともあります。
B.合弁企業
合弁企業とは、外国の出資者と中国の出資者が、共同で出資して設立された有限責任の企業形態です。外国の出資者の出資比率は原則25%以上となり、それぞれの出資比率に応じて利益が分配されることになります。
中国の出資者と共同で設立することにより、合弁相手の該当事業に関する中国市場でのノウハウや経験、地方政府との関係性を活用でき、また合弁相手からすれば日本企業の技術力を習得できるといったメリットがあります。一方、日本の出資者の合弁企業への管理、監督体制が不十分な場合自社の資産、利益が不当に流出したり、経営上の意思決定における合意が形成できずスムーズな事業運営ができない、或いは事業撤退時にトラブルになるなど会社設立時には想定していない問題が生じる可能性もあります。
C.合作企業
合作企業とは、合弁企業と異なり、外国の出資者と中国の出資者の権利義務の帰属・負担関係を出資比率ではなく合作条件を定めた契約によって決める企業形態です。
両者が合意した条件によって権限と義務の負担関係を柔軟に規定できる自由度がある一方、そのために設立時の交渉に時間がかかったり、また両者の認識にずれがある場合は事業を開始してからトラブルになることもあります。そのため上記の合弁企業と比較すると設立件数はかなり少なくなっています。
②駐在員事務所
駐在員事務所は、本社の一部として中国で設立された主に中国市場の情報収集、連絡業務を担う事務所形態です。そのため営業活動を行うことはできません。かつて外国企業の中国での法人設立のハードルが高い時代に多くの外国企業が駐在員事務所を中国に設立しましたが、一連の規制緩和を受けて徐々に現地法人を設立して事業活動を行う中で、当初の役割を終えつつあります。今では駐在員事務所を新たに設立されるよりも、現存する事務所を閉鎖を検討されているケースが一般的です。
③支店
支店は、独立した法人格を有さず本社組織の一部として事業活動を行うため形態です。実務上は、銀行と保険会社のみ設立を許可されている状況です。
2.設立手続きと所要期間
会社設立手続きについては、2016年10月から外商投資企業を設立する際の手続きが従来の許可制から大半の業種について届出制へと変更され、簡便化されました。
一方、一部の中国政府の定めるネガティブリストに記載されている業種や合併、買収による場合などは従来と同じ事前審査による許可が必要となりますが、ここではネガティブリストで制限、或いは禁止されていない業種を前提としてその設立手続きを説明します。
①各地域の商務部門への事前確認
上述の通り外商投資企業の設立手続きが大幅に簡便化された結果、現在では必ずしも商務部門の事前承認は必要ではなくなっています。しかしながら、その後の手続きをスムーズに進めるためにも設立手続きに着手する前に地方の商務部門への照会或いは確認を取っておくことは引き続き有用です。
②工商行政管理局で企業名称仮登録
会社名を決めると、まず工商行政管理局にて仮登録を申請する必要があります。
会社名は中国語(漢字)表記で、原則として地域+屋号+業種+有限公司という順序で構成する必要がありますが、実務上は屋号+業種+(地域)+有限公司のパターンが一般的です。
③董事の選任及び定款の作成
設立手続きにあたって董事を選任しておく必要があります。しかし、董事を日本本社から派遣する場合でもこの時点では就労許可を取れていないため、中国側合弁パートナーを任命するか会社設立を代行する現地の会社に依頼することになります。定款も定型の一般定款は設立代行会社によって手配することは可能ですが、企業にとっては根本的な活動内容を定めたものになりますので、少なくとも一読するか、特に合弁での設立であれば自社に不利な内容にならないよう董事会決議での全会一致決議事項を変更するなど実態に合わせて修正したり、場合によっては一から作成することも必要です。
④工商行政管理局で登記
⑤営業許可書の発行
続いて工商行政管理局で会社の設立登記を行う必要があります。
登記が完了すると、経営範囲や資本金額が記載された営業許可書が発行され、これにより中国で営業活動を行うことができます。
⑥オンライン届出
⑦届出受理書の受領
ネガティブリストによって制限或いは禁止されている業種に該当するなどの特別な事情がない限りは、外商投資情報総合管理システムというオンラインシステムを通じて設立の届出を行います。工商行政管理局からの営業許可書の発行前か或いは発行後30日以内に届出を行う必要がありますが、地域によっては工商行政管理局での登記の際にオンライン届出の受理書の提出を求められることもあります。
オンライン届出を提出した後は3営業日以内に届出完了もしくは届出が不完全、不正確な場合はその通知が届きます。
⑧関係各局への登録&銀行での口座開設
オンライン届出が完了し、営業許可書が発行されると、公安局・外貨管理局・質量技術管理局・税務局・財務局・労働局・社会保険局・統計局といった関係各局への登録手続きと銀行での口座開設手続きを行います。税務登記手続きの際に銀行口座の情報が求められることもあり、通常は各登録手続きと銀行での手続きは並行して行います。
全体で独資企業の場合は1ヶ月前後、合弁・合資企業の場合は3ヶ月前後かかることが一般的です。
(2018年7月5日追記)
6月30日より上記②、④、⑤の工商行政管理局の手続きについて、オンラインシステムにより手続きが可能となっています。(詳細はこちら)
3.必要書類
1.外商投資企業設立登記申請書
2.外商投資企業基本状況登記表
3.外商投資企業設立届出申告資料
4.会社の定款
5.銀行による資本信用証明書
6.企業名称仮登録通知書
7.出資会社の登記簿謄本又は出資者の身分証明書(日本で公証した上で、在日中国大使(領事)館による認証が必要)
8.会社の董事、監事、総経理の派遣、選任に関する証明書
9.会社の法定代表者及び董事、監事、総経理の身分証明書
10.会社の住所証明
(11.合弁・合作企業の場合、合弁・合作契約書)
その他、設立に際して必要となる書類は地域や管轄当局の担当者によってばらつきが見られますので、事前に担当者にご確認されておくことをお勧めいたします。
参考規定:外商投資企業設立及び変更届出管理暫定弁法(商務部令「2016」3号)、国家発展委員会・商務部公告 2016 年第 22 号、外商投資産業指導目録、企業名称登記管理実施弁法、中外合資経営企業法及び実施条例及び外商投資会社の審査認可及び登記管理における法律適用の若干問題に関する実施意見、外資企業法及び実施細則及び外商投資会社の審査認可及び登記管理における法律適用の若干問題に関する実施意見
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