中国の赤字事業をどのように立て直すか?

 

新型コロナ肺炎の影響が拡大しており、多数の日系企業の中国事業がその影響を受け、2020年業績の下方修正を余儀なくされています。
現在沈み込んだ需要は肺炎問題が終息すれば一定程度反発すると思われるものの、年間を通じて下落分を取り戻せない企業も多くなりそうです。
 
こうした状況の中、これまで赤字が続いていた企業は今回の件がダメ押しとなり、撤退を検討せざるを得ないところまできています。
2013年は前年の尖閣問題とそれに伴う日中関係の冷え込みから中国事業の撤退ブームとなりましたが、20年はそれに続く撤退ブームが到来する予兆を感じています。
 
個人的には赤字続きでもスリム化して採算ラインに再び乗せることができるケースもそれなりにあると思うので、現状維持か撤退かに加えて立て直しの方策も検討していただければと考えています。
 
今中国での日系企業の展開において、数年に亘り赤字が続いていて撤退を検討している会社というと、その筆頭は10年以上前に進出してきた安価な人件費を前提とした製造拠点が挙げられますが、実際再生支援のご相談をいただくケースも製造拠点がほとんどです。
 
製造拠点の再建を検討する際、打てる施策は実際のところかなり限定的です。
 
まず、中国で作った製品を本社、或いはグループ内の他の国の拠点に販売するような拠点の場合、グループ内のバリューチェーンにおける機能や付加価値がそもそもかなり限定されていますので、撤退検討時の定量評価は割とシンプルです。
中国外への移転を考える際、求められる機能や品質を満たした上でできるだけコストを下げられる最適な立地ということになりますので、それ以外の中国における特定の要素に依存しない場合、中国の生産拠点を別の国に移管することで得られるコストメリットが中国の撤退コストや他国の立ち上げコストを上回れば、中国は撤退という判断になります。
 
最近ではグループ内での販売からグループ外の中国ローカル企業への内販へと切り替えた企業が、ローカルメーカーの台頭と共に業績が低迷しているというケースが多くなってきています。
 
この場合もBtoCの会社と比べると施策は限定的だと感じます。
 
第一に異なる製品群やセグメントがある場合でも、中国の生産拠点では個別に収益性が分析されていないケースがよく見られます。
また、個別に管理されている場合でも、共通費用の配賦計算などの方法が現状を正しく反映していない場合など、却って現状把握を阻害していることもありますので、まず正確な収益性を把握して不採算セグメントを特定します。
 
その上でセグメント毎に判断することになりますが、実際赤字続きの工場ではほとんどすべてのセグメントで不採算となっていることも多いので、収益性の改善が見込めない場合はこの時点で撤退する他ないという結論に達することもあると思います。
 
不採算事業の立て直しを図る際もBtoBの場合、販売先となる顧客像は比較的明確で、ニーズも限定的です。製造機器メーカーなどの場合、つまるところ顧客が必要とする機能を満たしており、それをできるだけ安価に提供するという点において、ローカルや外資の競合他社に比べて競争力があるかという点に集約されます。
 
販売戦略としてはマス広告や今流行りのデジタルマーケティングなどはほとんど効果がありませんので、営業担当者の評価制度の刷新や、値引きや販促費の最適化などにより戦略のかなりの部分が構築されます。
 
一方グループ内の販売かグループ外の内販かに関わらず、コストの精査とカットは一定の効果が見込めます。
中国の場合、よく目に見えないコストと言われたりしますが、許認可関連の手続きや設備、内装関連費用などで政府から業者を指定されたりすることがあり、費用の一部が最終的に役人に流れており、積み上がって高コスト体質になっている場合があります。
また、原価低減においては日本人がベンダーの再選定に関与することで、その過程でキックバックなどが見つかると大きく低減に寄与する場合もあります。
その他総務部でも工場の清掃、警備、食堂に関する支出などは特に地域の反社会勢力が関与してきやすく、不正が起こりやすい支出となります。
 
上記のような施策で不十分である場合は従業員のリストラや早期退職といったオプションを検討していくこととなります。
 
 
 

 

 

 
 
 

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