中国子会社から本社への貸付は可能か?その注意点とは?

 

中国子会社にて一定期間累積している利益剰余金について日本の本社に配当による課税を回避して資金を還流させたいというご相談をいただくことがあります。

将来的には中国での再投資の可能性があるものの、目下中国内に資金需要がなく、また中国内に多額のキャッシュを眠らせておくことは資金効率の面でも、為替変動や不正、放漫経営といったリスクの面でもできるだけ避けたいといった状況が想定されます。

 

この場合、日本への役務対価や無形資産使用料を支払う方法以外に、クロスボーダーでの貸付を行う方法があります。

中国では国外の関連会社に対してクロスボーダーの貸付を行うことが、外貨、人民元共に認められています。

国外の関連会社への貸付に際して、注意すべき点は下記の通りです。

 

・貸付対象

国外の持株関係のある会社。

なお、この持株関係については外貨管理局による明確な出資比率の定義はありません。そのため親子会社や関連会社に限定されないかという点について各地の外貨管理局で見解が異なる可能性があります。

 

・貸付金額と原資

人民元と外貨の国外貸付残高の合計は、直近年度の監査済みの所有者権益の30%まで。

原資は個人資金、債務・調達資金の使用は不可です。

 

・貸付条件

貸付利息は商業原則に合致する合理的な範囲で、ゼロを超えることとされていますが、移転価格の観点からは同条件での一般的な銀行借入利率相当とすることが望ましいと言えます。

貸付期限は人民元による場合、原則6カ月から5年以内でロールオーバーは1回までとされています。外貨の場合は以前は2年まででしたが、現在は制限が撤廃されています。

 

・貸付手続

貸付実行前に所在地の外貨管理部門にて登記手続きを行う必要があります。

 

・貸付の目的

中国子会社から本社への貸付を行う合理的な商業目的がないと見なされる場合、実質的な配当として源泉税10%が課税される可能性があります。

また、取扱銀行に対しても貸付の実際の用途の厳格な審査や、短期間に頻繁に貸付を実行するような場合は状況説明の提供を受けることが要求されています。

 

なお、貸付に対して発生する利息については中国子会社に支払う際に日本で10%の源泉税が課税され、中国でも企業所得税及び6%の増値税が課税されることとなります。

 

 

参考規定:「資本項目外貨管理政策を更に改善と調整することに関する通知」(匯発[2014]2号)、「国内企業の人民元対外貸付業務関連事項の更なる明確化に関する通知」(銀発[2016]306号)、「外貨管理改革を更に推進し、真実性・合法性審査を完備することについての通知」(匯発[2017]3号)

 

 

 

 

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