中国 個人所得税法改正案が全人代常務委員会で審議

 

 

個人所得税法修正案のドラフトが6月19日に第13期全国人民代表大会常務委員会第3回会議にて審議されました。

成立すると個人所得税法の改正は2011年以来となり、本改正案は全体として大幅な減税を含むより抜本的なものとなっています。

以下ではその改正案の内容について簡単にご紹介します。

 

1.居住・非居住の概念の導入

現行の所得税法では、暦年単位で中国に満1年居住しているか否かで納税者としてのステイタスが変わることになっていますが、これを国際租税の慣例に倣って居住・非居住の概念を導入し、それによって納税義務などを区別することとしています。

居住判定は183日の滞在日数を元に行うことにより、税務管理の簡便化が図られます。

 

2.労働所得についての部分的総合課税の導入

これまでは11種類の所得について分離課税とされていましたが、そのうち給与・賃金、労働報酬、原稿料、特許使用料の4項目の労働所得については合算した上で同一の累進税率を適用する総合課税となります。

それ以外の所得については引き続き分離課税となります。

 

3.所得税率の変更

給与所得を含む総合所得税率は3%から45%の7段階のまま変更はありませんが、3%〜25%が適用される所得額を引き上げることにより、中・低所得層にとっては大きな減税となります。

一方30%以上の税率が適用される所得部分については変更はないため、高税率が適用される外国人にとっては実効税率にはそれほど大きな影響はありませんが、25%以下が適用される所得部分は丸々減税の影響を享受できることとなります。

個人事業主等に適用される経営所得は、5%〜35%の5段階のまま変わりませんが、各税率が適用される所得額は変更となり、35%の最高税率が適用される所得は現行の年10万元から50万元に大幅に引き上げられます。

 

4.費用控除額の変更

上記2.により4項目の労働所得が総合課税となったことに伴い、基礎控除額が統一されることになります。これまで給与所得の基礎控除額は個人所得税法施行時の月800元から段階的に引き上げられ、現在3,500元となっていますが、本改正案では更に月5,000元(年6万元)まで引き上げられる予定です。

外国人の場合は個人所得税法実施条例において1,300元の追加控除が定められており、計4,800元の基礎控除が適用されてきましたが、本改正案において廃止され中国人と同じ5,000元に統一されます。

 

5.追加控除項目の新設

4.の基礎控除の他、これまでの養老保険、医療保険、失業保険、住宅積立金等の特別控除項目は維持しながら、更に子女教育費、継続教育費、高額医療費、住宅ローン利息や住宅賃料といった生活に密接に関連する支出が新たに控除項目として新設されます。

 

6.反租税回避条項の追加

企業所得税法の反租税回避規定を参照し、独立個人間の取引の原則に則っていない財産移転やオフショアでの租税回避などについて税務機関による更正処分の権限や罰則が規定されます。

 

その他、非居住者の課税方法についても明確化が図られます。

 

 

6月23日追記

上記の個人所得税法改正案は、今回の全人代常務委員会第3回会議においては表決に至らず、6月22日に閉幕となりました。

全人代常務委員会は全人代の常設機関として、毎年3月頃に開催される全人代の閉会中に全人代に代わって法律の制定や改正を担います。

通常の立法プロセスは提案→審議→表決→決議という順序を経て行われますが、今回の個人所得税法の改正案は本会議中には表決へと進まなかったこととなります。

ただし、それにより今後個人所得税法の改正が行われないということではなく、通常このような大きな法改正については表決までに数回の審議を経ることが一般的ですので、8月、10月に予定されるそれぞれ第4回、第5回の常務委員会会議においても更なる審議が行われ、改正の最終案が議論される見込みです。

 

 

(中国の個人所得税制度の解説はこちら

 

 

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