中国子会社へ支払う業務委託料 税務上の注意点は?

 

中国に子会社を持つ日本企業の多くが、中国子会社から様々な物品、或いはサービスを輸入しています。
 
その中で特に、中国子会社に対して市場調査や営業支援などの業務を委託することにより対価として業務委託料を支払っているようなケースについて、以下では検討しておくべき税務上の注意点をいくつかご紹介します。
 
 

日本側検討ポイント

寄附金認定

海外子会社に対する業務委託契約は、それが子会社の財務支援を目的として締結されている場合には寄附金として課税対象となります。
そのため、日本側では支払う委託料に見合う役務の提供を受けているかを検討し、きちんとその成果を残しておく必要があります。
 
海外子会社の業務委託料が寄附金として認定された過去の判例には、以下のようなものがあります。
 
健康食品の製造等を営む会社が、韓国市場に進出するためその100%子会社を韓国に設立し、市場開拓や需要動向の調査などの業務を委託し、その対価として支払った委託費を損金に参入していましたが、全額が寄附金として認定されたというものです。
国税不服審判所は、同社が役務提供の事実を証明する資料として提出した証拠書類が、韓国子会社の従業員から同社の社長に対する通常業務の一貫としての連絡、伺いの域を超えない報告書等であることから、韓国子会社が契約に基づいて役務を提供した具体的な事実はないとして寄附金と認定しました。
 
この判断におけるポイントは以下の2点です。
 
1.契約に基づく役務提供の対価が、独立第三者間で授受される対価に基づいて決定されているかどうか
2.子会社から現実に便益を享受し、かつ享受している場合には、その享受している事実を立証し得る証拠資料を提出できるかどうか
 
そのため、業務委託契約を締結する際には、きちんと実態を備えているか、それに対する成果物、金額の算定根拠があるか、もしその業務を子会社に委託しないとすると、他の第三者に委託する必要があるか、といった点を事前に確認しておく必要があります。
 
 
 

源泉徴収の有無

中国子会社への業務委託の対価を支払う場合に日本での源泉徴収は発生しませんが、例えば中国にあるグループ内研究開発拠点に対して開発委託を行うような場合に、その研究開発拠点が独自の知的財産権を持っていると、開発委託の対価として支払う委託料が知的財産権の使用料とみなされる可能性があり、その場合には日本での源泉徴収が必要となります。
 
過去に中国子会社にソフトウェアの開発を委託し、その対価が業務委託料なのかロイヤリティなのかを巡って争われた判例があります。
 
 
 

中国側検討ポイント

コストマークアップ率

これは上記の中国側のみならず日本側においても問題になり得るので、どちらか一方に税務リスクが偏りすぎないようグループ間での調整が必要になりますが、委託料をどう設定するかという問題があります。
 
子会社によって提供される役務の対価は、通常かかったコストに対するマークアップを上乗せして請求されますが、実態にそぐわない高いマークアップ率であれば日本本社による子会社支援として寄附金認定を受ける可能性があります。
一方で、中国子会社においても提供している役務に対して十分な対価を受け取っていない場合は移転価格におけるリスクとなりえます。
 
このマークアップ率の設定は、同業他社のベンチマークを分析して設定するのが一般的ですが、特別な付加価値のあるサービスでない通常の役務提供であれば、筆者の経験上簡便的に5%前後のマークアップ率を設定している企業が多いように思います。
 
中国の移転価格税制のルールでは、単一機能のみを有する企業は原則として合理的な水準の利益水準を保たないといけないこととされています。
そのため、仮に中国子会社に商流が通っておらず、100%収入を本社からの業務委託料でまかなっているような会社であれば、赤字であること自体が問題視されますので要注意です。
 

増値税の優遇措置

中国子会社へ支払う業務委託料は、増値税の課税対象取引として原則6%+付加費の計7%弱の流通税等が課されます。
 
通常の契約では流通税等は日本の本社が負担するものとして、子会社からは契約額+増値税+付加費を請求するのが一般的ですが、日本では消費税の仕入れ控除の対象とはならず、純粋にコストとなります。
 
ただし、この増値税及び付加費は委託業務の内容によってクロスボーダーサービスの増値税免税の対象業務に該当する可能性があります。
その場合は、届出をすることによって増値税のゼロ税率あるいは免税の適用を受けることが可能です。
 
(サービス取引の増値税免税制度の詳細はこちら
 
 
 

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