発票って何?単なる請求書ではない中国の発票の仕組みを解説!
発票とは?
発票とは、中国の増値税の税収を管理するために使用される証明書のことです。
中国の増値税は、日本の消費税と同様の最終消費者が負担する付加価値税のことで、その計算方法はどちらも基本的には売上にかかる税から仕入時に支払った税を控除することにより計算します。
(増値税の仕組みはこちら)
中国には「以票管税」という言葉があり、票(発票)を以て税収を管理しています。
そのため、日本では企業が社内で記録している仮払消費税と仮受消費税を元に自主申告するのに対し、中国では取引時に発行される発票という証明書が根拠となります。
すなわち、仕入時に支払った増値税を売上増値税から控除するには、この発票を相手に発行してもらい、これを税務局のシステムで認証することによって初めて支払増値税の控除が認められます。
また、購入したモノやサービスを原価や経費に計上するためにも、この発票の保管が必要となります。
一方販売側は取引相手の求めに応じて発票を発行すると、これが税務局のシステムに残りますので、売上を申告せざるを得ないという仕組みになっています。
発票の種類
発票はその発行体や業種によって自動車や二輪車販売専用の発票や、タクシー用の発票、電車の乗車券用の発票など、15ほどの種類があります。
以下では、一般的な企業活動においてよく目にする専用発票と普通発票についてご紹介します。
専用発票
専用発票とは、仕入控除・輸出還付に使用することができる発票のことで、支払った増値税を仕入控除・輸出還付するためにはこの専用発票を発行してもらう必要があります。
ただし、企業は最終消費者である個人や小規模納税人に対して販売行為を行う場合や、その販売行為が免税である場合には専用発票を発行してはならないとされています。
以下は実際の専用発票のサンプルです。一番上に专用(専用)发票と記載されています。
普通発票
普通発票は専用発票と違って、仕入控除・輸出還付に使用することができない発票のことです。
交際費などは個人消費に属するとされており、旅客運輸、貸付、飲食、生活関連、娯楽サービスなどでは仮に会社の業務として行っている場合でも専用発票ではなく普通発票が発行されます。
以下は実際の普通発票のサンプルです。一番上に普通发票と記載されています。
この他にロール式の普通発票も存在しており、主に生活関連サービスについて使用されてます。
発票の実務
発票は一般的に英語でInvoiceと訳されるので、日本語で直訳すると「請求書」ということになりますが、上述した通りあくまで増値税管理の証憑であり、それ自体公式に請求書や領収書といった機能はありません。
そのため、実務上は企業が独自のフォーマットで請求書や領収書を発行することもあれば、発票を発行するタイミングによって請求書や領収書の代わりとして用いられているケースもあります。
増値税暫定条例によると増値税の納税義務発生のタイミングは、課税販売行為が発生し、代金を受け取った日或いは請求権を獲得した日とされていますので、取引相手との取り決めにより発票の発行は請求時点であったり代金の領収時点であったりするようです。
ただし、もしそれよりも先に発票を発行した場合は発行日に納税義務が発生します。
会計上の売上計上とのタイミングにおいては、本来税法と会計上のルールはその趣旨が異なるため、会計上の処理と税務上の処理に乖離が生じるのが一般的ですが、実務的には所管税務局から会計上の売上が発票の発行と一致していることを求められるケースも多く、これが会計基準の正確な運用への妨げになっている側面もあります。
発票の電子化
上記で中国は「以票管税」と述べましたが、最近では「信息管税」と言われ、キャッシュレスと並んで発票の電子化が進められています。
幾つかの要件を満たす企業は、税務局のシステムで申請することにより、電子発票を発行することができます。
ここ1、2年で多くの消費者向けサービスにおいて、例えば携帯アプリで利用するようなサービスではほとんどの場合、発票をアプリ上で取得できるようになりましたが、これにより発行体にとっても煩雑な増値税発行実務(増値税専用プリンターでの印刷や郵送業務)から解放されることとなりました。
例えば以下は中国のタクシーアプリから取得した電子発票です。
中国では偽札の流通がキャッシュレス化を促進したと言われていますが、発票も偽物が出回っているので、近い将来全ての発票が電子化されることが予想されます。
(不正な発票を調べる方法はこちら)
参考規定:増値税暫定条例、営改増試験実施弁法(財税「2016」36号)
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