新個人所得税法の外国人関連規定が明文化

 

201911日から適用されている新個人所得税法について、314日に公布された公告にて主に外国人納税者に関連する主要な論点が明文化されました。

中国の(新)個人所得税制度を簡単解説!日本との違いは?

 

出向者及び出張者の申告においては非常に重要となる規定ですので、以下ではポイントをかいつまんでご紹介いたします。

 

①中国の居住者判定基準について

新個人所得税法では中国国内滞在日数が183日以上の場合居住者と判定するいわゆる183日ルールが採用されていますが、中国滞在日数を計算する際、中国内に24時間滞在する日を1日として数え、滞在時間が24時間に満たない日は滞在日数に加えないこととされています。

 

②所得の源泉地

  • 中国国内勤務期間に取得する賃金給与は国内源泉所得となります。中国国内企業と国外企業の職務を兼務する場合或いは国外企業の職務のみに就いている場合で、国内、国外にて同時に業務に従事する場合は、国内源泉所得の計算は1年間のうち中国内で勤務した日数により按分して算出することになります。その場合、24時間未満の滞在日は半日として計算します。
  • 数ヶ月の計算期間について一括で受け取る賞与や年度末賞与、配当などの賞与やストックオプションの中国勤務期間に対応する国内源泉所得の期間按分については、以前までの月数按分から日数按分へと変更されました。
  • 董事、監事、高級管理職の職務に就く者が受け取る国内企業が支払い、もしくは負担する職務報酬については国内での職務履行のあるなしに関わらず国内源泉所得となります。

 

③国内源泉所得の計算方法

非居住者で国内滞在日数が90日を超えない場合、90日を超えており183日未満の場合、居住者で183日以上滞在した年度が連続して6年未満の場合、連続して6年以上の場合、また高級管理職について、国内源泉所得の計算公式がそれぞれ規定されています。

従来は国内、国外所得を合わせた総額に対して税額を計算し、それを滞在日数で按分して国内源泉所得に対応する税額を計算していたのに対し、所得自体を按分して国内源泉所得を算出する方法へと変更されている点がポイントです。

 

④税額計算

  • 非居住者は上記の計算方法によって計算した国内源泉所得から税法の規定する控除額を控除し、月次総合所得税率表に当てはめて税額を算出します。
  • 非居住者が一月の間に数ヶ月の計算期間に亘る賞与やストックオプションを受け取る場合、賞与額を6で割った金額に対して適用税率を当てはめる優遇計算方法を年1回のみ適用できます。この計算方法は今回新しく規定されたものです。

 

⑤租税条約の適用

租税条約適用に際しての取扱いが明確化されました。

 

⑥その他の関連規定

  • 1納税年度において初めて月次申告を行う際に、雇用契約の状況などに基づき当年度の滞在日数を見積もった上で居住者或いは非居住者としてそれぞれの計算公式を適用して税額を計算することとなります。結果として年度中にステイタスが変わる場合の処理方法も合わせて規定されています。
  • 国内企業の職務に就いており、国内源泉所得となる賃金給与の一部又は全部が国外の関連企業から支払われる場合、個人による自主申告か国内企業による源泉徴収かを選択できます。国内企業が源泉徴収を行わない場合、給与支払後15日以内に税務局に報告することとされており、これまで徴収が不完全であった国外で支給される給与についても捕捉するための規定が整備されています。

 

 

参考規定:「中国国内に住所を有しない個人の居住期間判定基準に関する公告」(財税[2019]第34号)・「非居住個人および住所を有しない居住者に関する個人所得税政策の公告」(財税[2019]第35号)

 

 

 

 

 

 

2019年1月からの新個人所得税法施行を受け、日系企業の皆様におかれましては中国人、日本人出向者ともにこれまでの所得税申告業務のプロセスを見直し、適正な納税を担保するための体制を整えておく必要がございます。
中国人の申告においては、これまで比較的シンプルであった基礎控除の他、各種の特別控除項目が規定され、源泉徴収義務者として従業員からのより広範な情報収集が必要となります。
出向者の申告においては、依然不明確な点も多く、引き続き動向を注視しながらタイムリーな情報のアップデートとその迅速な対応、及び専門的な判断が必要となる場面が想定されます。
 
モンドパルコンサルティングでは、上記の新法適用に向け、その対策をはじめとする中国個人所得税各種コンサルティング、コンプライアンス業務のサポートを提供しております。
 
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