2017-2018年度版 シンガポールの税制まとめ
以下にシンガポールの主な税金項目についてご紹介します。
個人所得税
シンガポールでは、賦課課税制度が採用されており、納税者から提出された申告書をもとに、税務当局が査定し、税額を賦課決定します。(日本は、自主申告制度であり、納税者が申告書の作成、及び最終税額の確定をします。)
また、シンガポールでは個人所得税を課すにあたり、納税者を居住者と非居住者に分類し、異なる税率が適用されます。
居住者
以下のいずれかに該当する場合は、居住者となります。
・シンガポール国籍である。
・シンガポール永住者、もしくは、シンガポール国内に居住用不動産を所有している。
・外国籍でその年の1月1日から12月31日までに183日以上シンガポールに滞在(仕事も含む)している
上記のいずれかの条件に当てはまる場合で、年収がS$ 22,000を超える場合は下記テーブルの税率に基づいて申告が必要になります。(年収S $22,000以下の場合、シンガポール税務当局(以下、IRAS)からの通知がない限り、原則申告の必要はありません。)
課税所得(S$) |
税率(%) |
控除額(S$) |
〜20,000 |
0 |
0 |
20,000〜30,000 |
2 |
400 |
30,000〜40,000 |
3.50 |
850 |
40,000〜80,000 |
7 |
2,250 |
80,000〜120,000 |
11.5 |
5,850 |
120,000〜160,000 |
15 |
9,050 |
160,000〜200,000 |
18 |
14,850 |
200,000〜240,000 |
19 |
16,850 |
240,000〜280,000 |
19.5 |
18,050 |
280,000〜320,000 |
20 |
19,450 |
320,000〜 |
22 |
25,850 |
[D/S: Inland Revenue Authority of Singapore, Income Tax Rates]
【計算例】
所得がS$75,000の場合、該当税率7%をかけた上で控除額S$2,250を差し引いた残りの金額S$3,000 (=S$75,000×7%ーS$2,250)が納税金額となります。
非居住者
その年の1月1日から12月31日までのシンガポール滞在日数が183日未満の場合は非居住者として扱われます。
滞在日数が61日以上183日未満の非居住者は税率15%もしくは居住者に適用される累進税率のどちらか高い税率で課税されますが、租税条約の適用が可能な場合は一定の要件を満たせばシンガポールでの課税が免除されます。
一方滞在日数が60日以下である場合にはシンガポール国内法により個人所得税が免除されます。
(会社の取締役、芸能人、コンサルタントや弁護士等シンガポールで専門家として従事する場合は除く)。
また、居住者、非居住者いずれの場合も、課税対象はシンガポール内源泉所得に限られ、キャピタルゲイン、シンガポール法人からの受取配当金、受取利息などは原則非課税です。
申告書の提出について
提出期限は原則、翌年の4月15日までとなっており、それまでに申告書を作成し、IRASへの提出が求められます。
申告書の提出は郵送、もしくはオンラインで選択することが可能であり、毎年3月1日より申告用紙の利用が可能になります。
提出すべき申告書フォームは上記に記載の居住者、非居住者、個人事業主によって異なります。
・居住者 – Form B1
・非居住者 – Form B
・個人事業主 – Form M
申告書提出後は、課税通知書(Notice of Assessment)が送付されますので、課税通知書受領後は、30日以内に税金を納める必要があります。
法人税
シンガポールでは、法人税申告にあたって、賦課年度(Year Of Assessment, 以下YA)ベースで年度を認識しますので、2017年中に終了する会計事業年度、例えば2017年3月31日に終了する会計事業年度は、税務上YA2018となり、2018年12月31日に終了する会計事業年度は、YA2019となります。
シンガポールでは属地主義が採用されており、シンガポールに源泉がある所得、及びシンガポール国外源泉所得のうちシンガポールで受け取られる所得に対してのみ課税されます。
さらに原則キャピタルゲインは非課税ですが、株式のトレーディングを業務として行なっている場合など、繰り返し発生するキャピタルゲインは事業所得とみなされます。
法人税率は、一律17%ですが、数々の優遇税制(インセンティブスキーム)がありますので、多くの場合実効税率は17%を下回ります。例えば、スタートアップ企業は設立後3年間は最初のS$100,000の所得について免税、次のS$200,000の所得に対して50%が課税対象となります。
さらに、特定の企業のみならず、すべての企業が一定の法人税減免を享受できます。
YA2018では法人税額の40%(上限S$15,000)が減税でしたが、YA2019では法人税額の20%(上限S$10,000)の減税額が適用されます。
YA2019において仮に課税所得がS$500,000であった場合の税額計算は以下の通りです。
YA2019(単位:SD)
課税所得 |
500,000 |
未払法人税(17%) |
85,000 |
減税額(17,000(85,000×20%)と10,000の低い方) |
10,000 |
納税額 |
75,000 |
[D/S: Inland Revenue Authority of Singapore, Corporate Tax Rates, Corporate Income Tax Rebates, Tax Exemption Schemes and SME Cash Grant]
また、特定の産業(銀行、資産運用、運送、リース)では17%以下の税率が適用され、場合によっては免税となります。
財・サービス税
GSTと呼ばれ、日本の消費税にあたります。
消費者によって購入された商品やサービスが課税対象となり、標準税率は7%です。輸入に際しては通関時に課税されますが、輸出においては0%課税で、国外での取引は課税対象外となります。
関税
シンガポールでは、特定の品目以外には関税は課されません。
「アルコール製品」「石油製品」「たばこ類」「自動車」の4品目については、輸入税と物品税と呼ばれる関税項目のいずれか、もしくはその両方が課されます。
なお、物品税については、輸入時のみでなく、シンガポールで生産された際にも課税されます。
「アルコール製品」「石油製品」「たばこ類」については従量税方式、「自動車」については従価税方式が採用されています。
※従量税方式:商品の数量を基準にして税率を決める課税方式。
従価税方式:財やサービスの取引価格を基準にして税率を決める課税方式。
印紙税
不動産売買や不動産賃貸、株式譲渡など特定の契約文書には印紙税が課されます。
印紙税の課税額は従価税方式もしくは契約文書ごとの固定額により決まります。
不動産税
不動産に対しては不動産税が課されます。
住宅用不動産には、以下の税率で累進課税が適用されます。
・不動産所有者が居住している不動産(コンドミニアム、HDB(公団住宅)等):0~16%
・不動産所有者が居住していない不動産 :10~20%
上記以外の不動産には、年間評価額に対して以下の税率が適用されます。
・商業用不動産 :10%
・住宅用土地 :5%
なお、年間評価額は、類似の不動産が得られる一般的な収入額をもとに算出されます。
相続税
現在シンガポールでは相続税が廃止されています。
[D/S: Inland Revenue Authority of Singapore]