中国のPE課税 出張者の個人所得税申告のポイントは?

 

中国に常時複数の出張者が滞在しているケースなどでは、そのプロジェクトに関連して中国内にPEが存在すると見なされる場合、各出張者毎に年間の居住日数を183日未満に調整している場合でも中国で個人所得税の納税義務が生じます。
 
 
 
通常中国への出向者の場合、出向先の子会社等が源泉徴収義務者として出向者の申告、納税を代行します。
一方で出張者の場合は、中国内に源泉徴収義務者がいませんので、その申告実務はより複雑になります。
 

①どこで申告するか?

まず1点目はどこで申告、納税を行うべきかという場所の問題ですが、この点について明確に定められた国内ルールはありません。
 
理論上は出張者の国内所得の発生地、すなわち実際の役務提供を行う出張地の管轄税務局にて申告と納税を行うべきだと思われます。
しかし、中国国内の役務提供先企業の登記地が実際の役務提供地と異なる場合、PE認定とそれに伴うPE課税はこの中国内企業の管轄税務局により処理されることとなりますので、この税務局との間で論争になる可能性があります。
 

②どのように申告するか?

加えて、その申告時の実務において、中国では個人所得税の申告システムが整備され、居住者はオンラインでの申告が可能となっています。
 
一方で源泉徴収義務者のいない出張者の場合はシステムが対応できておらず、会社名義ではなく個人名義で管轄税務局の窓口で申告手続きを行う必要があります。
その際に必要となる根拠資料や納税方法の要求は各地域の税務局によりバラバラで、実質的に申告ができない状態である場合もあります。
窓口での申告手続きは紙の申告表を元に税務局担当者がシステムに入力する必要があるので、窓口担当者が手続きを嫌がって無理な要求をされることもあります。
 
出張者の無申告に対する調査により遡って追徴されるようなケースがある一方で、自主的な申告の際には窓口でなかなか受理してもらえないなど、申告実務に矛盾が生じていることが多々あります。
 

③どのように計算するか?

またその税額計算も一般的な出向者よりも複雑となります。
 
まず中国の国内法においては年間居住日数が183日以上の場合、居住者として位置づけられます。
居住者に該当すると年度を通じて徐々に適用税率が切り上がる「累計予納源泉徴収法」を適用して計算することとなりますが、現行の申告システムにおいては個人名義での登録の場合、居住者として設定ができないなどの問題があります。
 
更に、中国内の居住日数に応じて課税所得額の計算方法も異なります。
 
出張者が中国で申告すべき所得額はその国外所得を含む全所得を元に中国内で負担、支給された部分の割合や中国内での勤務日数に応じて按分することとなります。
ただし183日以上の居住者と183日未満の非居住者、また非居住者でも90日超か90日以内かにより按分計算の方法が異なります。
国内居住日数が多いほど、申告すべき所得額に傾斜がかかるような設計になっています。
 
賞与に関連する税額の計算方法も居住日数に応じて異なります。
 
居住日数が183日以上の居住者の場合、年1回性賞与の優遇計算方法が適用できます。
これは賞与の金額を12カ月で分割した後の金額を元に適用税率を当てはめる方法です。
 
一方居住183日未満の非居住者の場合は、賞与額を6カ月で分割した金額に対して税額を計算し、それを6倍にすることで算出されます。
 
上記の2通りの計算方法はそれぞれ根拠規定が異なりますので、非居住者用の計算方法は適用期限がありませんが、居住者用の優遇計算方法は2021年末まで有効となっています。
 
その他、居住・非居住を判定する際の居住日数ですが、中国に入国した日或いは出国した日など、滞在時間が24時間に満たない日は除いて計算します。
それに対し、上記の課税所得額の算出に際して用いる国内勤務日数は滞在24時間未満の日を0.5日としてカウントします。
これらは中国で実際に勤務をしていたか否かに関わらず、土日を含む休日や休暇も含めなくてはならない点にも注意が必要です。
 
 
 
 
 

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