中国 取引先や合弁相手の簡易信用調査の方法は?

 

中国企業との新規の取引を開始する際、特に与信取引を行う場合には取引先の信用調査を行うことが一般的です。
 
大規模な取引や合弁契約を行う場合などは調査会社に依頼して詳細な調査を行いますが、そこまで必要でない場合でも、企業の登記情報は公開されていますので、最低限登記情報や訴訟の有無、行政処罰の履歴などは確認しておくことをお勧めします。
 
特に最近では工商局のデータベースと連携したアプリが色々あり、即座に無料で情報を得ることもできますし、アプリでの独自基準に基づいた総合的なリスク評価も閲覧することができます。
代表的なWebサービス・アプリとしては「工商登記APP」、「启信宝」、「企查查」、「天眼查」などがあります。
 
ちょうど某ハウスメーカーの中国関連会社にて合弁相手側の中国人幹部による大規模な資産の横領が行われていたことが報道されていますので、このケースを例にとり合弁先の登記情報を「启信宝」を使ってみてみたいと思います。
 
まず該当の合弁企業の名前を「启信宝」で検索します。
基本情報の他、株主の情報や幹部の情報、登記変更の情報などを閲覧することができます。
 
 
中外合弁企業ではその機関として株主会を設置できず、董事会に最高意思決定機関としての大きな権限が委ねられています。
そのため、董事会での議決権比率が非常に重要になりますが、この合弁のケースでは日方出資者の出資比率が83.65%にも関わらず董事会の比率は日方4名、中方4名の50:50と、中外合弁企業法実施条例第31条において董事の比率は出資比率に基づいて協議の上決定すると規定されていることを考えると、少しいびつな構成となっているようです。
 
続いて合弁企業の株主情報から、中方合弁相手の中国企業のページを閲覧します。
 
 
企業名や人物名などはそれぞれリンクが貼られており、詳細を確認することができます。
合弁企業の中方側トップの副董事長と董事1名は同姓で、この1名の董事が中方出資者の株式を50%保有する実質オーナー、かつ両名は他にもグループの会社の幹部を兼任しており家族関係を思わせる深い繋がりがあることがわかります。
 
続いて裁判履歴や行政処罰の履歴を見てみると、多数の訴訟を提起され、裁判所からの支払命令を履行しない被執行人として何度もリストに挙がっています。
また、地域の環境保護局からも数度の行政処罰を受け罰金を課されています。
 
 
 
 
 
結果として「启信宝」の総合的なリスク評価としてはかなり高リスクに分類されています。
日本企業の合弁相手としてはこの円グラフの右側の赤い方に位置するようであれば警戒すべきと言えます。
 
 
 
合弁を組む際や継続的な取引をする場合に、契約の開始前に一度だけ信用調査を行い、それっきりというのはよくあるパターンですが、ひどいケースでは本社の知らない間に中方出資者により董事を変えられてしまっていたという話もあります。
 
相手先の経営状況が時間を経て悪化したり、或いは株主構成が変わって反社会的勢力が関与していることもあるので、合弁相手や継続取引先はもとより自社が出資する合弁企業であっても意思決定のタイミングだけでなく継続的な情報収拾やモニタリングは欠かさないようにしていただきたいと思います。
 
 
 
 
 
 

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