増値税率引き下げによって企業の税コストが上がる?

 

3月5日に開幕した全人代の政府活動報告において、製造業や交通運輸、建築業等にかかる増値税率の更なる引き下げが表明されました。
 
 
営業税が増値税に全面移行した際や昨年の増値税減税時にも議論になる論点として、増値税改革がそもそも自社にとって税負担の減少となるのかというものがあります。
 
増値税は日本の消費税と同様付加価値税ですので最終消費者が負担することとなり、減税時には最終的に製品やサービスを購入する人にとっては価格が安くなるため景気刺激の効果が見込めます。
 
一方企業にとってはコストにかかる増値税は製品やサービスの販売時点で販売先に転嫁することになりますので、制度設計上は原則として増値税を負担しないこととなります。
 
 
 
つまり、税率が変わっても本来企業が負担する税コストは変わりませんが、中国の場合特に国内企業との取引では増値税額込みの価格で合意していることが多く、その場合にはそのことが原因で税率の改訂時に税コストの負担が増えてしまい、契約条件で取引先と揉めるということがよく起こります。
 
例えばある販売会社が販売契約は税抜で、仕入契約は税込で契約しているケースを考えてみます。
 
販売価格150、仕入価格100とすると減税前の増値税率は17%ですので売上150(請求金額は175.5=150×1.17)ー仕入85.47(=100/1.17)=利益64.53となります。
 
これが税率16%への減税後には売上150(請求金額は174=150×1.16)ー仕入86.21(=100/1.16)=利益63.79となり、17%→16%への減税によって利益の金額が64.53→63.79へと減ってしまっています。
 
つまり増値税率の引き下げ=減税というのはあくまで最終消費者の税負担が減るということであり、契約条件によっては企業にとっては利益減少の要因となります。
 
上記はシンプルな例ですが、取引の種類や件数が多様な会社にとっては税率変更の影響が見えにくくなりますので、これだけ頻繁に増値税率が改訂されるのであれば自社への影響の正確な把握や、将来的な税率の推移予測(当面は減税の方針ですが)に基づく契約交渉などを行う必要があります。
 
 
 
 
 
 

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