中国 新個人所得税法の実施条例と追加控除の草案が公開

 

 

10月20日に中国個人所得税法に関する追加控除暫定弁法と実施条例の意見募集用の草案が公開されています。
 
今後寄せられた意見を元に更に修正が加えられることとなりますが、基本的な内容は今回の草案を踏襲するものと思われます。
 
その中で、重要と思われるポイントは下記の通りです。
 

追加控除項目の詳細規定

改正個人所得税法において規定された追加控除項目ですが、その詳細が明確化されています。
各追加控除項目の概要は下記の通り。
 
①子女教育費
満3歳から小学校入学前、および小学生、中高生、大学生、大学院生までの子女がいる場合、一人につき一月あたり1,000元。
 
②継続教育費
納税人の学歴取得のための教育費について月400元、納税人の職業資格取得のための教育費について月300元。
 
③高額医療費
個人で負担する年15,000元超の医療費を高額医療費とし、上限60,000元まで。
 
④住宅ローン利息
納税人あるいは配偶者の住宅ローン利息月1,000元。
 
⑤住宅賃料
納税人が主たる勤務地において持ち家がなく賃貸の場合、都市の規模に応じて月800元〜1,200元。
 
⑥老人扶養費
60歳以上の父母または法定扶養家族がいる場合、納税人が一人っ子であれば月2,000元、兄弟がいれば兄弟で月2,000元を配分し、一人当たり月1,000元まで。
 
 

外国人の特別免税項目の選択適用

今回の改正個人所得税法で追加控除項目が新設され、外国人がこれまで適用を受けていた特別免税項目と一部項目が重複していることから、これらも基礎控除額の統一と同様に統一ないし廃止されるのでは、との懸念がありました。
特に外国人の住宅賃料は高額であることが多く、これに中国人と同様の控除額の上限が適用されてしまうと、外国人にとっては今回の法改正により大きな増税となってしまう可能性がありました。
 
 
しかし、今回公開された追加控除暫定弁法ではこの点に配慮し、外国人は現行の特別免税項目を選択適用することが可能である点が明記されています。
 
 

5年ルールの維持

中国での居住期間が満5年を超えなければ国外所得について課税が免除される通称5年ルールについては、新実施条例の草案において改めて継続することとなりました。
 
さらに、今後は困難になると思われた30日超の一時出国による5年ルールのリセットについても、新実施条例の草案において満5年居住かつ連続30日超の出国がある場合は、国外所得について中国国内企業或いは個人から支払われた部分のみ課税する、と明記されたことにより引き続き全世界所得課税への有効な回避策となりそうです。
 
 
 
上記のように外国人の今後の課税関係について当初の改正案で懸念されていた点はほとんど救済される方向性が明確にされ、現行の優遇措置は維持した上で基礎控除額の引き上げ及び低税率が適用される所得の範囲が広がったことによる減税という有利な改正点は適用されるという、非常に歓迎すべき内容となっています。
 
 
 
 
 
 
 
2019年1月からの新個人所得税法施行に向け、日系企業の皆様におかれましては中国人、日本人出向者ともにこれまでの所得税申告業務のプロセスを見直し、適正な納税を担保するための体制を整えておく必要がございます。
中国人の申告においては、これまで比較的シンプルであった基礎控除の他、各種の特別控除項目が規定され、源泉徴収義務者として従業員からのより広範な情報収集が必要となります。
出向者の申告においては、依然不明確な点も多く、引き続き動向を注視しながらタイムリーな情報のアップデートとその迅速な対応、及び専門的な判断が必要となる場面が想定されます。
 
モンドパルコンサルティングでは、上記の新法適用に向け、その対策をはじめとする中国個人所得税各種コンサルティング、コンプライアンス業務のサポートを提供しております。
 
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