増値税って?10分でわかる中国増値税の簡単解説(営業税廃止後)
1.増値税って?
英語ではVAT(Value Added Tax)と呼ばれ、日本での消費税に相当する付加価値税です。
日本の消費税の税率が一律で同じなのに対し、増値税率は品目や納税者のステータスによって異なり、17%、11%、6%、3%の4種類があります。(2017年6月まではこれに13%を加えた5種類)
それぞれの税率に対応する品目は、17%が標準税率として主に物品の販売、輸入や有形資産リース、11%がその他特定品目の販売、輸入や交通運輸・郵便・基礎電信・建築などの役務、不動産の譲渡など、6%がその他の金融サービスや現代サービスなどの役務、3%が小規模納税人(後述)に課される税率となっています。
以前は物品の販売には増値税、サービスの取引には営業税という住み分けがありましたが、2016年5月に営業税が廃止され、増値税に一本化されました。
2016年度の中国全土での増値税収入は4兆712億元と前年度比で30.9%増加していますが、これは営業税が増値税に切り替わったことによる影響で、増値税と営業税を足し合わせた合計値で比較すると16年6月〜12月はトータルで前年比16.9%減少と、営業税が廃止されたことにより全体としては減税となっています。
(18年5月1日追記)
2018年5月1日より増値税の減税に伴い、上記の17%と11%の増値税率はそれぞれ16%と10%に変更されています。
(19年3月5日追記)
2019年3月の全人代により、上記の16%と10%の増値税率はそれぞれ13%と9%へと引き下げられることが決定しています。
2.増値税計算の仕組み
増値税は付加価値にかかる税金のため、そのコストは最終消費者が負担する仕組みとなっています。
増値税納税額=売上増値税(売上×税率)ー仕入増値税(仕入×税率)
3.増値税発票の種類
増値税発票には大きく普通発票と専用発票との2種類があり、専用発票の中には発行後に修正・取り消しのための赤字発票というものがあります。
①増値税普通発票:仕入増値税の控除や還付の際に使用できない発票。
②増値税専用発票:仕入増値税の控除や還付の際に使用できる発票。小規模納税人に対する発行は禁止されています。
(増値税赤字発票):増値税専用発票を発行した後に返品、値引き、割戻しが発生した場合、または発票を間違って発行してしまった場合などに発票を修正したり、取り消したりしたい時に、金額をマイナス表記で発行する発票です。
(増値税発票の仕組みはこちら)
4.増値税還付の仕組み
増値税暫定条例第2条3項では、物品の輸出について増値税率はゼロである旨が定められています。
ただ、輸出する物品にかかる売上増値税がゼロであっても、仕入増値税はそのまま企業の負担になってしまいますので、一旦払っている仕入増値税を申告により還付する形で輸出取引の実質税負担を軽減しています。
還付額の計算は納税人のステイタスにより、単純化すると以下の3つの計算方法に分類されます。
①製造業:免税控除還付方式
輸出製品に関連する仕入増値税−輸出額×(17%−還付率)
②貿易業:免税還付方式
輸出製品に関連する仕入増値税×還付率
③小規模納税人:免税方式
還付なし
還付についてはその全額が認められているわけではなく、13%を標準税率として、17%〜0%の品目に応じて設定された還付率に基づいて計算します。
一方、役務(サービス)の輸出については、原則課税対象となり、免税や還付が認められる輸出取引は限定されています。輸出取引の内容に応じて、売上増値税の免税及び仕入税額の全額還付、もしくは売上増値税の免税のみ、の2種類の適用が可能です。
5.小規模納税人って?
売上高など、一定の規模に達しない納税者は小規模納税人と呼ばれます。
小規模納税人の増値税率は3%ですが、仕入増値税を控除できないため、結果として増値税負担は一般納税人よりも重くなります。
この税負担部分は通常価格に上乗せされるため、一般的には小規模納税人からの物品・サービスの価格は通常より高くなる傾向があります。
参考規定:増値税暫定条例、「増値税税率の簡素化・統合に関する通知」(財税[2017]37号)、増値税税率の調整に関する通知」(財税[2018]32号)、「増値税小規模納税者基準の統一に関する通知」(財税[2018]33号)
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