中国の税務事前裁定制度とは?概要と事例を解説!
中国の税務環境は年々複雑化しており、企業は税務リスクを最小限に抑えるための対策を求めています。こうした状況の中で、「税務事前裁定制度」が注目を集めています。
以下では、税務事前裁定制度の概要や最近の動向、具体的な事例などについて分かりやすく解説します。
1.税務事前裁定制度とは?
- 概要
税務事前裁定制度とは、企業が特定の税務問題に対して、納税前に税務当局に正式な見解を求めることができる仕組みです。この制度を活用することで、企業は将来的な税務リスクを低減し、税務計画の透明性を高めることができます。 - 目的
税務判断の確実性向上: 企業が事前に税務当局の見解を正式に確認できることで、不確実性を排除
税務コンプライアンスの向上: 税務ルールに対する遵守を促進
企業の税務コスト削減: 予測可能な税務計画が可能となり、コスト削減につながる
2.最近の動向
2024年に入り、中国政府は税務事前裁定制度の試行を加速しており、北京、上海、広州南沙などの主要都市において、詳細なガイドラインが策定されています。
これにより、企業の相談件数が増加しており、より実用的な制度としての整備が進められています。
中国政府は、事前裁定の申請対象となる事項を拡大し、特に以下の分野に注力しています。
- 国際税務問題(移転価格、恒久的施設認定)
- 関連会社間取引
- 税額控除や優遇税制の適用範囲
3.申請プロセス
税務事前裁定の申請は、以下のステップで進められます。
- 事前準備: 企業が税務問題に関する資料を収集し、申請の必要性を検討
⇓ - 申請書の提出: 地方税務局へ公式な申請を行う
⇓ - 税務当局の審査: 提出された資料を基に税務当局が審査を実施
⇓ - 裁定の発表: 税務当局から公式な見解が企業に通知される
申請の受付から回答までの期間は、おおむね3〜6か月とされています。
4.事例
事例1 増値税適用税率の事前裁定
A社は、北京でのスマート食器洗浄サービス事業を展開するにあたり、6%の増値税率が適用されるかどうかの事前裁定を税務当局に申請しました。
A社のビジネスモデルは、飲食店内でデジタル制御を用いた食器洗浄、乾燥、消毒を一括して行うもので、税務当局はサービス提供のコスト割合を考慮し、6%の増値税適用を事前に認めました。
事例2 破産重整における税務処理
B社は、破産手続きの一環として不動産を出資する計画に関し、土地増値税の免除適用について事前裁定を申請しました。
B社は、破産手続きの一環として不動産を出資する計画に関し、土地増値税の免除適用について事前裁定を申請しました。
税務当局は、破産プロセス中の資産処分に関する特例規定を適用し、土地増値税の免除を認めるとともに、房産税および城鎮土地使用税の減免措置についても指導を行いました。
事例3 企業所得税の特殊処理
C社は、グループ内の再編において、企業所得税の特殊性税務処理を適用するための事前裁定を申請しました。
C社は、グループ内の再編において、企業所得税の特殊性税務処理を適用するための事前裁定を申請しました。
税務当局は、取引の合理性や持株比率、継続的な経営活動の維持などの条件を満たしていることを確認し、特殊性税務処理の適用を認める旨の裁定を下しました。
5.日本の事前照会制度との違いは?
日本の事前照会制度(アドバンスルーリング)は、税務署が企業に対し税務処理の助言を提供する仕組みです。
中国と異なり、日本の制度では税務当局の回答には法的拘束力がなく、納税者にとって参考意見に留まる点が大きな違いです。
一方、中国の事前裁定は税務当局に法的拘束力を持ち、企業が裁定の意見に基づいて関連取引の手配を実施した場合、税務局は後続の税務処理において、事前裁定の結果を遵守しなければなりません。
たとえば、上海市税務局の管理弁法では、企業が提供する情報が合法的、真実、正確、かつ完全であり、実際に発生した税務関連事項が申請資料と一致している限り、税務当局は裁定の意見に従って処理する必要があると規定されています。
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